岡山大学大学院環境生命科学研究科の藤原日向大学院生（研究当時）、山口寛登大学院生、同大学術研究院の中田和義教授、勝原光希助教らの研究グループは、都市化が在来植物の開花フェノロジー（開花時期や期間）に与える影響を調査し、都市環境が植物の繁殖成功に新たな形で影響を及ぼす可能性を示した（掲載誌：Journal of Applied Ecology）。
開花フェノロジーとは、植物が花を咲かせる時期や期間のことで、気候変動や都市開発などの環境変化に敏感に反応する。――本研究では、岡山市内の農村域と都市域にそれぞれ2か所ずつ、計4つの調査エリアを設定し、在来一年草ツユクサ約250集団を対象に、週1回の開花量調査を3年間継続して実施した。その結果、都市域では、農村域と比べて開花開始が早く、開花期間が長い傾向が見られた。また、側溝や道路脇などの局所的な生育環境では、集団間の開花同調性（花が咲くタイミングの一致度）が低く、送粉者昆虫による花粉の移動が制限されることで、繁殖成功が低下する傾向が確認された。――
研究グループは、都市環境における微小な生育地の違いが開花フェノロジーの多様化を促し、それが集団間の開花ズレを生み、結果として花粉の行き来を妨げる可能性があると指摘している。今後は、「開花フェノロジーの変化が長期的に植物集団の局所絶滅を引き起こすかどうかを検証する必要がある」と述べている。