都市化による果樹害虫の進化~人工光に強く、多産に!
発表日:2024.12.10
千葉大学大学院理学研究院の高橋准教授と同大学融合理工学府2年の佐藤氏は、都市化と生物の個体数変動に関する新知見を発表した。──都市化による生物多様性の喪失が懸念されており、都市生態系における人工照明の影響などが報告されている。本研究は、夜間人工光が果樹害虫・オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)の繁殖行動に与える影響を評価したもの。──研究グループは、関東地方の都市と郊外に由来する系統を「夜間照明のない環境」と「微弱な夜間照明(10 Lux)のある環境」で飼育し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、双方の成虫サイズや繁殖行動を観察した。その結果、夜間照明のある環境で飼育された個体は体が数%小さく、雄の求愛行動が弱くなる一方、雌の産卵数は2倍以上増加することがわかった。また、都市系統の個体は郊外系統に比べて、夜間照明の影響を受けにくい傾向が見られた。すなわち、都市に生息する個体は、夜間人工光の影響を受けにくい進化を遂げていることが示唆された。──害虫管理への応用はもとより、都市化が引き起こす生物種の個体数変動や多様性、生態系サービスの変化を予測するための手がかりとなる知見のひとつである。