微生物燃料電池で遠隔農地をモニタリング―四電ら、長距離通信FSを開始
発表日:2025.10.22
四国電力、東京農工大学、RING-e、伊方サービスの4者は、愛媛県内のみかん園地において、微生物燃料電池を活用したセンシングおよび長距離通信の実証試験を開始した。本実証は、昨年9月からの予備的な発電確認を経て、2025年10月下旬から2026年3月末までの期間、八幡浜市および伊方町の園地にて実施される。
四国電力らが実証する微生物燃料電池は、東京農工大学が技術研究を進めてきたものである。基本的な原理は、土壌中に存在する「発電菌」と呼ばれる微生物が、有機物を分解する過程で電子を放出する性質を利用する。これらの電子は地中に埋設された負極に集められ、センサー等を通じて正極へと移動することで電流が発生する。代表的な発電菌にはジオバクター菌やシュワネラ菌があり、自然界に広く分布している。東京農工大学では、こうした微生物燃料電池の発電効率や安定性の向上に向けた研究を継続しており、同大学発のベンチャー企業RING-eを通じて実用化・商用化を目指している。電源の確保が困難な屋外環境でも持続的に電力を供給できる点が評価されており、山間部や傾斜地における持続的な電力供給手段として期待されている。
今回の実証では、微生物燃料電池を電源とした温湿度センサーと通信モジュールを地中に設置し、遠隔地からのモニタリングを実現する。東京農工大学が技術研究とデータ分析を担い、RING-eが燃料電池の製作・提供を行い、伊方サービスが園地の提供と機器管理を担当する。四国電力は全体の企画立案を担う。4者は本実証を「スマート農業推進事業」の一環として位置づけ、農業生産者の負担軽減と持続可能な農業支援の観点から、微生物燃料電池の社会実装を見据えている。