理研・東大、セルロース由来の海水分解プラスチックを創製
発表日:2025.12.03
理化学研究所と東京大学大学院工学系研究科の研究チームは、木材成分セルロース誘導体を原料に、しなやかで堅牢でありながら塩水中で速やかに分解する新型プラスチックを開発した(掲載誌:Journal of the American Chemical Society)。
従来の生分解性プラスチック(ポリ乳酸など)は自然に分解するとされてきたが、水に溶けにくいため分解に時間がかかり、結果として微細な破片(マイクロプラスチック)が残ることがある。この微粒子は海や河川に流出し、生態系や人の健康に悪影響を及ぼす懸念がある。研究チームはこの課題を解決するため、超分子イオン重合という新しい合成法を開発した。
今回の手法では、「カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)」と「硫酸グアニジニウムモノマー(PEIGu)」を水中で混合し、静電相互作用に基づく架橋高分子ネットワークを形成する。さらに、米国食品医薬品局(FDA)が安全性を認めた食品添加物である「塩化コリン」を可塑剤として添加することで、硬いガラス状から130%伸びる弾性体まで力学特性を自在に調整できる。このプラスチックは、使用後に海水などの塩水に浸すと、分子レベルで結合がほどけて元の原料に戻る特性を持つ。そのため、分解した原料をエタノールで分離・回収し、再び同じ品質のプラスチックに作り直すことができる。こうした仕組みを応用することで、従来のプラスチックのように複雑な回収・分解工程を経ることなく、簡単な操作で繰り返し再利用し、水平リサイクルが容易になる。また、海洋流出時にもマイクロプラスチックを生じない点で環境負荷低減に寄与する。
研究チームは「自然界に豊富なセルロースから、海洋で安全に分解するプラスチックを創出した。この技術は地球をプラスチック汚染から守る」と述べている。
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