Mn錯体光触媒で低濃度CO2から“人造石油原料(CO)”を効率生成
発表日:2025.11.27
広島大学大学院先進理工系科学研究科の鴨川特任助教、石谷特任教授らは、希少で高価な貴金属を一切使用せずに低濃度二酸化炭素(1〜10%)を一酸化炭素(CO)へ直接還元する光触媒システムを開発した(掲載誌:Journal of the American Chemical Society)。
これまでのCO2還元光触媒の多くは高濃度(ほぼ100%)のCO2環境を前提とし、排ガスからのCO2濃縮・分離に多大なエネルギーと費用を要していた。しかし、工場や発電所における実排ガスのCO2濃度は数%〜20%程度であるため、CCU(Carbon Capture and Utilization)においては、濃縮工程を省略できる「低濃度CO2直接資源化」技術の実現が重要な課題となっていた。
本研究の鍵は、地球に豊富な元素であるマンガンに着目し、マンガン錯体触媒と有機色素(4DPAIPN)の組合せを検証したことである。マンガン錯体の配位子に嵩高いメシチル基を導入して耐久性を向上させ、さらにトリフルオロエタノールと少量のジイソプロピルエチルアミン共存下でCO2捕集能を高めた。その結果、可視光照射により、100%CO2雰囲気比で、10%CO2時に約88%、1%CO2時に約44%の速度でCOを選択的に生成し、低濃度条件でも高い反応速度を維持することが示された。COは化学産業における重要原料かつ人造石油の原料であり、本成果は排ガス中CO2を濃縮せず直接資源化するCCU技術への展開可能性を示すものとなった。
研究グループは、実排ガスでの性能評価や還元剤の水利用、さらなる耐久性向上を今後の課題として挙げている。なお、本研究はJST知財活用支援事業「スーパーハイウェイ」の支援を受けて行われた。