太平洋側北極海における海氷下の海洋熱輸送増加に関する新知見
発表日:2026.02.16
海洋研究開発機構(JAMSTEC)とカナダ漁業・海洋省 海洋科学研究所(シドニー)の研究者らは、太平洋側北極海における海氷下の海洋熱輸送が過去20年間で約1.5倍に増加したことを明らかにした。この暖水流入量の増大は、同海域で観測される急速な海氷減少を駆動する主要因の一つとして強まりつつあり、極域の熱・成層構造の変化を理解するうえで極めて重要な知見となる(掲載誌:Journal of Geophysical Research Oceans)。
今回の成果は、太平洋側北極海で観測される海氷下の熱収支が、この海域固有の海洋循環変化と密接に関係している可能性を示している。外洋からの一方向的な熱供給ではなく、太平洋—北極間の結合した流体系を念頭に置くことで、近年の海氷減少と暖水流入量の増加との関係性を、より整合的に説明できる状況が整理された。すなわち、シベリア沿岸域からベーリング海峡にいたる循環変調が、気候強制力に応じて暖水の流入を変化させ、その結果として海氷下での熱輸送が増大してきたことが、長期観測の解析から示唆されるものである。
海氷下の熱輸送量は、氷の季節変化や領域ごとの融解パターンを把握するうえで重要な指標とされる。本研究で示された増加傾向は、海洋混合や塩分成層といった局所的な過程に影響を及ぼす可能性があり、これらの変化が氷厚や季節的な安定性の変動にどのように関与するかを検討するための有力な基礎情報となる。こうした観測結果は、北極海の熱・物質循環に関する理解を深めるうえで参照され得るものであり、将来予測モデルにおける関連過程の表現精度向上にも寄与する可能性がある。
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