自動車リサイクル技術

 自動車リサイクル技術とは、使用済み自動車を構成する鋼板(鉄、アルミニウム)、バンパー、バッテリー、ガラスなどの部品や素材をリサイクルする技術の総称である。自動車は様々な部品と素材から構成されるため、自動車のリサイクル技術には多数の要素技術が含まれる。
 自動車のリサイクルは、金属(鉄、アルミニウム)部品を中心に従来から盛んに行われてきたが、2005年1月から本格施行された「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称:自動車リサイクル法)の施行にともない、自動車製造業者・輸入業者は、自らが製造・輸入した自動車が使用済みになった場合に生じるシュレッダーダスト(破砕された後の最終残さで、Automobile Shredder Residueの頭文字をとってASRとも略される)、エアバッグ類、フロン類を引き取ってリサイクルすることが義務づけられた。その結果、これまで埋め立てられることが多かったシュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residue)も、サーマルリサイクルによりエネルギー回収を行うなど、積極的にリサイクルが進められるようになっている。また、最近では、設計段階からリサイクルがし易いように配慮した環境配慮設計の導入も進んでおり、バンパー等のリサイクルがさらに進められている。

使用済み自動車処理とリサイクル(経済産業省、環境省 「自動車リサイクル法の本格施行に向けて」等より作成)

使用済み自動車処理とリサイクル
(経済産業省、環境省 「自動車リサイクル法の本格施行に向けて」等より作成)
出典:環境省「平成20年度版 環境白書・循環型社会白書」
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h20/html/hj08020402.html

※外部リンクは別ウィンドウで表示します

1.背景

1)従来の自動車リサイクルと自動車リサイクル法の制定

 日本では年間約360万台の自動車が廃車になっている。自動車は鉄やアルミニウム等の金属が使用され、バッテリー等の有用部品が多く使用されていることから、使用済み自動車(ELV: End Life of Vehicle)及びその有用部品は有価物として解体業者や破砕業者において売買を通じて流通し、自動車の重量の約80%がリサイクルされ、残りの20%がシュレッダーダスト(自動車シュレッダー残さ Automobile Shredder Residue の頭文字をとってASRとも略される)として埋め立てられてきた。
 しかし、循環型社会の構築が求められる中、1990年代後半から産業廃棄物の最終処分場のひっ迫により、使用済自動車から生じるシュレッダーダストを削減する必要性が高まった。さらに、使用済み自動車は、従来はスクラップとして有償で引き取られていたが、最終処分費の高騰、鉄スクラップ価格の低下・不安定な変動により、処理料金を払って処理しなければならなくなる(いわゆる逆有償)など、リサイクルシステムがうまく機能しなくなり、路上での放置自動車、不法投棄・不適正処理が問題視されるようになった。
 このため、自動車製造業者を中心とした関係者に適切な役割分担を義務付けることにより使用済自動車のリサイクル・適正処理を図るため、「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称:自動車リサイクル法)が、平成14年7月に公布され、平成17年1月1日から施行された。

2)自動車リサイクル法の概要

 自動車リサイクル法におけるリサイクルの流れは図1に示す通りである。この法律では、自動車メーカー・輸入業者に、シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類の引取・リサイクルを義務づけるとともに、その処理費用を自動車の所有者がリサイクル費用として負担することを定めている。車の所有者は、購入時にリサイクル料金を販売店に支払うと、リサイクル券が発行されるので、廃車時にリサイクル券とともに車両の廃車手続きを行う。支払われたリサイクル料金は、資金管理団体である(財)自動車リサイクル促進センターが管理し、廃車のリサイクルの実施状況についても、同センターが情報を把握・管理している。

図1 自動車リサイクル法の流れ

図1 自動車リサイクル法の流れ
出典:(財)自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクル法とは/リサイクルの流れ」
http://www.jarc.or.jp/automobile/law/index03.html

 平成20年度は、約370万台の使用済み自動車が引き取られており、フロン類回収事業者等を経て、解体事業者へと引き渡され、リサイクルが行われている。

2. 技術の概要

1)自動車リサイクルの現状

 2005年1月に自動車リサイクル法が施行された後、自動車のリサイクル率は94%を超えるまでになっている(図2)。これは、シュレッダーダスト、エアバッグ、フロン類といった、それまで進んでいなかった品目のリサイクルが進んだことによる。
 なお、自動車リサイクル法では、シュレッダーダストの2015年以降のリサイクル率を70%以上に設定しており(2003年度では17%程度)、これが達成されると自動車全体の重量で約95%のリサイクル率となる。そのためには自動車リサイクル技術の高度化が必要である。

図2 使用済み自動車処理とリサイクル

図2 使用済み自動車処理とリサイクル
出典:環境省「平成20年度版 環境白書・循環型社会白書」
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h20/html/hj08020402.html

2)自動車の解体工程

 図3に使用済み自動車の解体工程の概要を示す。自動車の解体では、バッテリーやエアコン、ドア、バンパー、ミラー等のパーツが外され、中古部品として利用できるものは中古品として流通し、それ以外のものは鉄くず等の回収業者に引き取られる。また、オイル、ガソリン等の液類も抜き取って回収される。残りの車体部分はプレス機でプレスされた後、シュレッダー業者で破砕される。シュレッダーダストはこの破砕工程で発生する。図4に使用済自動車をシュレッダーの前工程であるプレシュレッダーに投入している様子を示す。プレシュレッダー以降の工程については、2.5)を参照されたい。

図3 使用済み自動車の解体工程の概要

図3 使用済み自動車の解体工程の概要
出典:(株)井上商店「解体工程フロー」
http://www.inoue-r.co.jp/recycle/car/scrap

図4 使用済み自動車のプレシュレッダーへの投入の様子

図4 使用済み自動車のプレシュレッダーへの投入の様子
出典:日立建機(株)「メタルリサイクルHi-OSS道場」
http://www.hitachi-kenki.co.jp/industry/hioss/metal_recycle/solution17.html

3)個別品目のリサイクルの概要

 自動車を構成する各部品・素材のリサイクルの状況を図5に示す。自動車重量の大半を占める鉄、アルミニウムについては、従来からリサイクルが進んでおり、一般の鉄製品、アルミ製品に再生されていることから、ここでは、自動車リサイクルを進める上で重要なシュレッダーダストと、近年リサイクルが進んでいるバンパーについて、主要なリサイクル技術を紹介する。

図5 自動車のリサイクルの概要

図5 自動車のリサイクルの概要
出典:(社)プラスチック処理促進協会「プラスチック図書館-自動車のリサイクル」(原図:(社)日本自動車工業会)
http://www.pwmi.jp/tosyokan2/11_car.html

4)シュレッダーダストのリサイクル技術の概要

 シュレッダーダストはさまざまな物質の混合物であり、その組成はシュレッダー工程の技術や車両ごとの事前選別の状況によって異なるが、主成分は樹脂、発砲ウレタン、繊維、ゴム等の可燃物が60%を占め、選別できなかった金属やガラス、土砂、水分が残りの40%を占める。現在、サーマルリサイクルを中心に以下のようなリサイクル方法がある。

(1)素材選別+燃料代替
 単一素材を回収するため、シュレッダーダストを分類し再利用する。選別には各種ふるいの他、風力選別、比重選別、磁力選別、渦電流選別等を用いる。その工程で得られる素材は銅等の残留非鉄金属、ガラス、軽量樹脂混合物等である。最終的に残った樹脂は燃料代替として利用する。

(2)燃料代替+原料化
 シュレッダーダストは高い発熱量(石炭並:約19MJ/kg)を有しているため、石炭や重油等の代替燃料として利用できる。このため例えば、製錬炉等に直接投入するケースや、前処理を行い既存設備での利用効率を上げてから投入するケースがある。また、シュレッダーダスト中の残留金属(銅、亜鉛、鉛、および微量の貴金属類等)を精錬工程で回収して利用することもできる。

(3)焼却処理+熱回収+原料化
 シュレッダーダストを廃棄物焼却炉で焼却し、廃熱ボイラによって蒸気や電力として熱回収する。焼却灰や残渣は溶融処理し、混合メタルとスラグとして回収される。また、得られたメタルはカウンターウェート等に、スラグは舗装材料に有効利用される。燃焼制御、高温による二次燃焼とダイオキシンの再合成を防ぐ排ガスの急冷、活性炭や触媒によるダイオキシンの除去等の環境対策技術を組み合わせた総合的なプロセスが実用化されている。

(4)乾留ガス化+ガス利用(熱回収)+原料化
 ガス化炉にシュレッダーダストを投入し、乾留ガスを工業用原料や燃料ガスとして利用する。ガス化炉とは、酸素の少ない状態で廃棄物を加熱(蒸し焼き)して分解し、固形物(残渣)とガスを得る炉のことである。この工程は、木炭の乾留と同じ原理であることから、得られるガスや固形物は、しばしば乾留ガス、乾留残渣と呼ばれる。シュレッダーダストをガス化する場合、乾留残渣は無機材料とともに1200℃以上の高温でスラグ化するか、またはそのまま工業用カーボン材料として利用する。ガス化は、元々無酸素雰囲気下での乾留であることからダイオキシンが生成しにくい利点がある。実際のプロセスとしては、ダイオキシンの再合成を防ぐ乾留ガスの急冷、ガス処理等を組み合わせた総合的な技術が確立されている。
 また、乾留ガスを燃料として利用する代わりに、発電用の燃料として利用し、灰分は溶融させて溶融スラグとし、原料として利用することもできる。炉の形式には、キルン方式、流動床方式、シャフト炉方式等がある(「ガス化溶融」の解説参照)。

5)シュレッダーダストのリサイクル事例

(1)マテリアルリサイクル
 わが国では、1998年8月からシュレッダーダストを大量に再資源化する(月15,000台の量産レベル)世界初のリサイクルプラントが稼働している。このプロセスのフローは以下の通りである(図6)。

  • 回転ふるいにシュレッダーダストをかけ、重いガラスを回収する。
  • 次に破砕機によって細砕化されたダストから磁力選別で鉄を回収する。さらに渦電流分別機によりアルミが取り除かれる。
  • 未分別の樹脂や繊維、ゴム類は、さらに細分化するため、2度目の破砕機にかけられ、その後風力分別機に入る。そこで重いもの(ガラス粉、ワイヤーハーネス、ゴム)と軽いもの(繊維、樹脂)に分別される。
  • 残渣は、さらに比重選別機や振動ふるい機にかけられ、銅資源、樹脂の助燃材、ガラスが回収される。

 こうして得られた繊維や樹脂は自動車の防音材(RSPP:Recycled Sound-Proofing Products)として使用される。図7(上)に RSPPの使用量を示すが、これまでに約1,600万台の新車の防音材(図7(下))として利用されている。
 また、97%以上の高純度の銅資源はミッション・ハウジングやシリンダーヘッドといったアルミ製品鋳造工場でアルミの強化材として注入される。ガラス分は建材メーカーで路盤材として再利用される。

図6 シュレッダーダストの処理フロー

図6 シュレッダーダストの処理フロー
出典:豊田メタル(株)「ASRリサイクル部_プラント設備図解」
http://www.toyotametal.com/ASR/01_2.html

グラフ

約150~200万台/年の新車の防音材として適用
図7 シュレッダーダストの処理フロー

ダッシュサイレンサー:防音材
図7 RSPP材料の使用量推移(上)と使用例(下)
出典:豊田メタル(株)「ASRリサイクル部_防音材(RSPP)の開発」
http://www.toyotametal.com/ASR/index.html

(2)サーマルリサイクル
 シュレッダーダスト(ASR)のサーマルリサイクルの事例を図8に示す。この事例では、2003年秋より工場内の廃棄物処理炉を一部改造し、シュレッダーダストの再資源化を実施している。実際には自社工場等から排出される廃棄物とシュレッダーダストを混焼し、燃焼時に発生するエネルギーを工場内の塗装前処理工程の加湿用等に利用している。2005年1月以降は400t/月の処理を行っている。
 なお、この工程においても、回収された金属分については、マテリアルリサイクルを行っている。

図8 ASRのサーマルリサイクルのフロー

図8 ASRのサーマルリサイクルのフロー
出典:日産自動車(株)「環境への取り組み」
http://www.nissan-global.com/JP/ENVIRONMENT/CAR/RECYCLE/USED/ENERGY/index.html

6)バンパーのリサイクル技術

 バンパーは自動車部品の中でリサイクルが進んでいる部品であり、最近では、環境配慮設計により設計段階からリサイクルがし易いように考慮されている(図9)。使用済み自動車からはずされたバンパーは、粉砕→溶融→成形→部品といった流れでリサイクルされ、主にアンダーカバーやケース類に再利用されている。このほかにも、破砕されてシュレッダーダストとして回収される分もある。
シュレッダーダストで樹脂が占める割合は約33%であり、その樹脂を事前に取り除き有効活用すればリサイクル率が向上する。そこで、バンパーのリサイクルを効果的に行うため、機械式剥離工程の後に、光学選別工程を追加することで、塗膜のついた粉砕品を選別除去する技術が開発されている。この工程による選別フローは以下の通りである(図10)。

  • バンパー粉砕後に塗膜を剥離処理した粉砕品を選別機のホッパーに投入する。
  • 粉砕品が落下してシューターを通過した後、光とCCDセンサにより粉砕品の反射強度を測定し、塗膜の有無を識別する。
  • 塗膜が付着している粉砕品は黒色の粉砕品よりも反射強度が強いため、これを検知し、噴射ノズルからエアーを噴射して塗膜が付着している粉砕品のみを分離する。

 この過程により、粉砕品は塗膜付きと塗膜なしのべレットに選別される。このバンパー・ツー・バンパーのリサイクル技術は、従来のリサイクル方式に比べ、設備コストが10分の1程度に抑えられるメリットがある。

図9 バンパーのリサイクル

図9 バンパーのリサイクル
出典:マツダ(株)「バンパーtoバンパーリサイクル」
http://www.mazda.co.jp/philosophy/tech/env/recycle/bumper2.html

図10 選別のメカニズム

図10 選別のメカニズム
出典:マツダ(株)「バンパーtoバンパーリサイクル」
http://www.mazda.co.jp/philosophy/tech/env/recycle/bumper2.html

3. 技術を取り巻く動向

 環境省では、循環型社会形成の推進や廃棄物に係る諸問題の解決を図るため、「廃棄物処理等科学研究費」を設け、関連のリサイクル技術の研究開発を進めている(平成21年度からは「循環型社会形成推進科学研究費補助金」に名称変更)。同制度のもとで、自動車リサイクルについては、「ASRの有価物回収と燃料化のリサイクル技術の開発」がこれまでに行われている。 この技術開発は、シュレッダーダスト(ASR)を前処理加工し、それを気流式破砕機で破砕した後、粒度選別、比重差選別、サイクロン等にて有価物(ワイヤーハーネス、鉄、アルミ、銅)と燃料化対象物に選別し、最後に燃料化対象物の固形化を行うものである。気流式破砕機は、廃家電の基板処理で用いられている破砕機で、図11に示すように、破砕機の下部からシュレッダーダストを投入して気流により吸引する。吸引されたシュレッダーダストは装置内部を螺旋状に回転しながら上昇し、排出されるが、その途中で破砕刃に繰り返し衝突することで破砕される。
 なお、図11には、破砕前のシュレッダーダスト(ASR)とそれを処理する気流式破砕機の外観および気流破砕後の回収物をさらに比重差選別して得た有価物(銅)をあわせて示した。
 これまでの成果として、燃料化合物の利用および、回収された有価物が全てマテリアルリサイクルされた場合は、リサイクル率は96.82~97.46%に達成されることが示されている。

図11 ASR処理技術の技術開発例

図11 ASR処理技術の技術開発例
出典:環境省「廃棄物処理等科学研究費補助金 平成15 年度次世代廃棄物処理技術基盤整備事業補助金」(PDF)
http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/kagaku/h15/jisedai/data/J1517.pdf

 この研究費補助制度では、これ以外にもアジア地域を対象とした自動車リサイクルシステムの研究など、制度面からも自動車リサイクルを進めるための研究が実施されている。

引用・参考資料など

(2010年3月現在)