最終処分及び浸出水処理

 最終処分とは、我が国においては廃棄物の埋め立て処分のことを指す言葉であり、廃棄物の収集・分別・焼却等の一連の処理工程の最後に行われるため、「最終」処分と呼ばれる。最終処分場にはいくつかの種類があるが、廃棄物は、その性状に応じて適切な処分場に埋め立てられている。
 浸出水処理とは、管理型最終処分場の浸出水に含まれる有機汚濁成分や重金属、難分解性有機物等を処理する技術である。最終処分場では様々な廃棄物が処分されるため、ごみ焼却処理が普及する前に焼却されずに埋め立てられた有機物系の廃棄物や、産業廃棄物等に由来する重金属、さらにダイオキシンを含む焼却灰などが埋め立てられ、その成分が浸出水に含まれることがある。そこで、浸出水を適切に処理する技術が必要になる。
 我が国では、昭和50年代初めに六価クロムを含有する産業廃棄物の不適切な埋立処分による健康被害が発生したことなどを受け、最終処分場に関する構造基準、維持管理基準、遮水構造基準が制定・強化され、それとともに浸出水対策も進められてきた。
 図は、現在の一般的な管理型最終処分場における浸出水処理フローである。大きく「前処理」「生物処理」「凝集沈殿処理」「高度処理」「後処理」に分けられ、各処理では最終処分場ごとに最適な処理技術が選定されている。

図 浸出水処理フローとしくみ

図 浸出水処理フローとしくみ
出典:(財)新潟県環境保全事業団ウェブサイト 「エコパークいずもざき 浸出水処理施設」
http://www.eco-niigata.or.jp/ecopark/inst_shinshutsu.html

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1.背景

1)我が国における、廃棄物最終処分体制確立の経緯

 我が国の現在の廃棄物処理体制は、高度経済成長期に大量のごみが発生するようになったことへの対策として、構築されてきたものである。
 当時、社会が大量生産・大量消費型へと変容し、1人1日当たりのごみ排出量が増加し続け、昭和40年代中盤には1kgを越える状況となった※。加えて、産業の高度化により難分解性の産業廃棄物が発生・増大するようになったが、それらの処理は企業に事実上、一任されていた。これらの事情により、当時の廃棄物処理体制は不十分な状況にあり、さらには自然環境への不法投棄による人々への健康被害も発生する事態となった。
 このような状況下、昭和45年に「廃棄物処理法」が制定され、事業者の産業廃棄物の処理責任が明確化された。さらに、昭和50年に六価クロム鉱さい(目的金属以外の不純物)が不適切に埋立処理されていたことに起因する健康被害が発生したことなどを受け、昭和52年に「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」が出された。同命令により、廃棄物の最終処分場に関する構造基準および維持管理基準が定められ、新たに設置する最終処分場の事前届出が必要となった。その後、平成10年の同命令の改正(平成10年改正命令)を経て、一般廃棄物最終処分場、管理型最終処分場、遮断型最終処分場、安定型最終処分場など種類別に遮水構造基準が強化されると、最終処分場の機能として貯留・保管が重視されるようになった

※環境省ウェブサイト 「平成21年版環境統計集  3.5 1人1日当たりのごみ排出量の推移」
http://www.env.go.jp/doc/toukei/contents/index.html

2)埋立処理における浸出水問題

 一般廃棄物処分場、安定型および管理型の産業廃棄物処分場には、雨水が入らないように処置されている処分場とそうではないものが存在する。後者では、雨水が廃棄物に接触すると、廃棄物中の有害成分が溶出して汚染される。この汚染水を浸出水という。
 浸出水の汚染原因は幾つか存在する。主要なものとして、ごみ焼却処理が普及する前に焼却されずに埋め立てられた有機物系の廃棄物(家庭からの可燃ごみ等)による有機汚濁や、重金属を含む産業廃棄物(廃自動車処理時に発生するシュレッダーダスト等)による重金属汚染が挙げられる。また、ダイオキシン類対策として高温での焼却処理が実施される以前に埋立処分された焼却灰からのダイオキシン類溶出についても、対策が実施されている。


2. 技術の概要

 本解説項目では、最終処分場の分類と、管理型最終処分場における浸出水処理システムおよび浸出水処理の要素技術を説明する。
なお、最終処分とは、我が国においては廃棄物の埋め立て処分のことを指す言葉であり、廃棄物の収集・分別・焼却等の一連の処理工程の最後に行われるため、「最終」処分と呼ばれる。最終処分に対する用語として、中間処理という言葉があり、主に破砕・分別(選別)・焼却処理のことを指す。

1)最終処分場の種類

 我が国では埋立地の容量および衛生上の問題から、一般廃棄物および産業廃棄物は、一部を除いて中間処理(破砕・分別(選別)・焼却処理など)した後、資源化できるものを取り除き、焼却残渣を埋め立て処分している。廃棄物の性質(安定性、安全性)に応じて、以下の3分類の処分場で埋め立て処分されている。

(1)安定型最終処分場
 安定5品目(廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・陶器くず、建設廃材で有機物の付着がないもの)のみが対象である。周囲の囲い、堰堤(えんてい:処分場内の廃棄物流出防止のために設けられる)などの設備ですむ簡便な処分場である。(図1(上))

(2)管理型最終処分場
 家庭から出る廃棄物や焼却灰、産業廃棄物における汚泥や燃えがら、シュレッダーダストなど(いずれも一定量以上の有害物質を含まないもの)が対象である。地下水汚染や土壌汚染を防止するため、底にシートを張るなど遮水が図られており、また、内部から出る汚水を集め排水処理できる設備も設置されている。(図1(中))

(3)遮断型最終処分場
 上記の管理型最終処分場での基準を超えるような廃棄物が対象である(例:有害な重金属などを含む産業廃棄物)。屋根付きで、内部は間仕切りされたコンクリート壁と蓋によって、有害なごみは、一切遮断され漏出しない構造になっている。(図1(下))

図1 最終処分場の分類

図1 最終処分場の分類
(上)安定型最終処分場、(中)管理型最終処分場、(下)遮断型最終処分場
出典:国立環境研究所ウェブサイト
「環境儀NO.24 『21世紀の廃棄物最終処分場-高規格最終処分システムの研究』」
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/24/04-09_2.html

2)浸出水処理システム

 図2は、管理型最終処分場から生じる浸出水の、一般的な処理フローである。自然流下により埋立地の下部に溜まった浸出水は、ポンプで汲み上げられて浸出水調整池に一時保留される。処理工程は、大きく「前処理」「生物処理」「凝集沈殿処理」「高度処理」「後処理」に分けられ、各処理では最終処分場ごとに最適な処理技術が選定されている。以下、順を追って説明する。

図2 浸出水処理フローとしくみ

図2 浸出水処理フローとしくみ
出典:(財)新潟県環境保全事業団ウェブサイト 「エコパークいずもざき 浸出水処理施設」
http://www.eco-niigata.or.jp/ecopark/inst_shinshutsu.html

(1)前処理
 前処理では、夾雑物や砂、カルシウムの除去を行う。また、塩類濃度が高く、生物処理および処理水の放流先に障害をもたらす場合には、溶解塩類を蒸留除去する。

(2)生物処理
 生物処理工程では、有機汚濁の処理や硝化・脱窒素を行う。有機汚濁のうち、微生物によって比較的容易に分解できるものについては、活性汚泥法、回転円盤法、接触曝気(ばっき)法等の生物処理によって除去されている(※これらは下水処理で適用されているものと共通であるので、「下水処理」 の解説も参考にされたい)。難分解性の有機物は、これ以降のプロセスで対処する。

[1]活性汚泥法
 微生物の集合体である活性汚泥を満たした処理槽(微生物の呼吸のために空気を送り込むことから、曝気槽ともいう)に、有機汚濁を含む原水を流入させ、微生物によって有機汚濁を摂取・分解させることで浄化する方法である。

[2]回転円盤法
 半円形の水槽の中で円板を回転させる。円板は空気中水中と回転をくり返し、空気中に現れた時に酸素をとり入れる。この円板を一定の速度で回転させ、表面に付着した微生物によって排水を好気的に浄化する。

[3]接触ばっ気法
 曝気槽の中に接触充填剤を入れ曝気する。排水中の有機物は、濾材(ろざい)表面に付着する微生物により浄化される。沈殿分離や汚泥の返送、引き抜きは活性汚泥の原理と似通っている。

(3)凝集沈殿処理
 浸出水中の浮遊物質や難分解性有機物、重金属を凝集沈殿して除去する工程である。

[1]水酸化法
 排水のpHをアルカリ性にして、重金属を水に難溶な水酸化物にしたうえで凝集剤を用いて沈殿分離する。

[2]硫化ソーダ法
 重金属と硫化ソーダを反応させ、水に難溶な硫化物を生成し、凝集剤を用いて沈殿分離する。

[3]フェライト法
 排水の温度を70℃以上に加温し、硫化第一鉄を添加した上で排水のpHをアルカリ性にして反応させると、水に不溶なフェライトが生成する。これを磁気分離する。

[4]キレート樹脂法
 この方法は一種のイオン交換であり、キレート系接着剤の官能基に排水中の重金属をキレート結合させ、除去する。キレート樹脂には、水銀吸着用と一般金属吸着用がある。

(4)高度処理
 凝集沈殿処理までの工程で、処理されずに残存している可能性のあるダイオキシン類のような難分解性有機物や重金属を除去する工程である。詳細は、3)で別途、解説する。

(5)後処理など
 高度処理された後の浸出水は、塩素で滅菌された後、再利用もしくは放流される。各設備から発生する汚泥は、脱水機によりケーキ化、安定化処理の後、処分される。

3)高度処理(ダイオキシン類への対策)

 浸出水を通じたダイオキシン類流出対策として、「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(平成9年)では、対策として「浸出水処理設備により浮遊物質除去を徹底(当面、処理水のSS濃度10mg/l以下)」と定めている。これによって放流水中の水質排出基準である10pg-TEQ/lは達成できると考えられている。しかし、最終処分場周辺の住民へ安心感を与えるために、高度な技術が求められている。

(1)促進酸化処理法
 オゾンや過酸化水素、紫外線などを併用することによって、強力な酸化剤であるOHラジカルを発生させ、水中の汚濁物を酸化分解、除去する方法である。選択性が低いため、特にダイオキシン類や農薬などの、水中で微量に含まれている有機物質の分解除去に優れた効果を発揮する。また、オゾンや紫外線、過酸化水素を使用するため、分解後は酸素や水になり、二次廃棄物が発生しない点でも優れている。
 図3は、促進酸化処理法のフローである。処理設備の写真が図4である。処理手段の組み合わせによってフローは異なるが、いずれの場合も原水の前処理が必須である。オゾンや過酸化水素、OHラジカルは反応性が高いため、他の除去方法でも容易に処理できるような物質に対しても消費されてしまい、運転費用がかさんでしまうからである。紫外線照射を併用する場合も、紫外線の照射距離には限りがあるので前処理によって原水の透過性を高めておく必要がある。

図3 フローシート

図3 フローシート

図4 オゾン/過酸化水素法処理設備

図4 オゾン/過酸化水素法処理設備

出典:(株)タクマ ウェブサイト 「ダイオキシン類分解システム『促進酸化処理法』」
http://www.takuma.co.jp/product/waste/water/shinshutu/dioxinoxidation.html

(2) 脱塩処理システム
 MF膜(Microfiltlation:精密ろ過膜、図5)+RO膜(Reverse Osmosis:逆浸透膜、図6)により、浸出水中の塩分を除去し、水道水レベルの水質を実現できる処理方法である。また、塩類だけでなく、窒素、COD、重金属類、ダイオキシン類の分離も可能である。
 図7は、脱塩処理システムのフロー図である。MF膜にて0.1μm~1μmの範囲の粒子や高分子を分離した後、RO膜で重金属類等を分離する。処理水はプラント用水として再利用できる。また、RO膜で除外された重金属等を多く含む濃縮水は、含水率10%以下の乾燥塩に精製できる。
 促進酸化法同様、このシステムも、原水を前処理しておくことで、膜の寿命を長くすることができ、効率の良い運転が可能となる。なお、水処理膜の詳細については、該当の解説を参照されたい。

図5 MF膜ユニット

図5 MF膜ユニット

図6 RO膜ユニット

図6 RO膜ユニット

図7 システム構成図

図7 システム構成図

図5~7出典:荏原エンジニアリングサービス(株)ウェブサイト 「最終処分場浸出水処理事業」
http://www.swing-w.com/products/disposal/hdmob60000000wdd.html

3.技術を取り巻く動向

 国立環境研究所・循環型社会・廃棄物研究センターでは、循環型社会に対応した安全・安心な廃棄物管理の技術について、研究している。そのテーマの一つに、高規格最終処分システムの研究がある。
 最終処分場は維持管理期間が終了すると、更地として使用可能になる。しかし、それには最終処分場内部の水質等の条件を満たすことが必要で、基準を満たすまでの年数が長期化しやすいことや、基準を満たしたとしても開発期間中に問題が発生する可能性があることなど、課題が多い。
 そこで、新しいコンセプトにもとづく高規格最終処分システムを提唱することとなった。その基本的な考え方は、処分場の維持管理期間を1世代(30年程度)以内とし、科学的に確実な「廃止(維持管理期間の終了)」へとつなげるために、川上への提案や埋立研究を行い、安心できる最終処分場づくりをめざすものである。例えば、埋立処理される廃棄物の組成や埋立方法を工夫することで、埋立地内部を空気の通りやすい好気的な環境にし、より早く安定化させるという方法である。そして地域に対しては、科学的根拠を踏まえた情報を発信するなど双方向対話の充実も図っていくものである。
 図8は、高規格最終処分システムの概念図である。新しい3つの最終処分場の類型として、「備蓄型(プラスチックなど、リサイクルできる素材をマーケット需要に応じて提供するため安全に保管する埋立地)」、「土地造成型(土砂に近い廃棄物を埋め早期に制限のない跡地利用を行うことができる埋立地)」、「安定化促進型(一定期間後の跡地利用のため安定化を促進する技術を導入した埋立地)」を提案している。

図8 高規格最終処分システムのめざすもの

図8 高規格最終処分システムのめざすもの
出典:国立環境研究所ウェブサイト
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/24/04-09_4.html


引用・参考資料など

(2012年11月現在)