山口大学環境DNA研究センターの辻学術研究員(現・京都大学大学院理学研究科)と赤松教授、福岡工業大学の乾教授らの研究グループは、「定量的な環境DNAメタバーコーディング(以下『eDNA定量メタバ』)」を用いることで、河川に棲む魚の種組成に加え、各魚種の個体数・生物量を同時に推定できることを実証した。環境DNAメタバーコーディングは、水試料などに含まれる生物由来のDNAを分析するだけで、調査対象種にダメージを与えずに調査地に生息する対象生物群を網羅的に検出できる。近年、全国各地で環境DNAを指標とする生物調査が試行され、そのメリットや応用可能性が広く認知されるようになった。しかし、一般的な環境DNAメタバーコーディングには分析上の制約があり、生物群集の構成は推定できるものの、各群集を定量的に評価することは困難であった。そこで本研究では、近年開発された定量的なメタバーコーディング手法(qMiSeq法, Ushio et al. 2018)を適用し、定量化されたeDNA濃度を魚捕獲調査の結果と比較することにより、魚群集の定量的モニタリングツールとしてのqMiSeqアプローチのパフォーマンスを評価することを目的とした。西日本の4河川(調査地点数:21箇所)で採水と電気ショッカーを用いた捕獲調査を行い、両法の結果を比較した結果、eDNA定量メタバにより推定された「環境DNA濃度」と捕獲調査に基づいて推計された「個体数・生物量」の間に有意な正の関係が見られた。さらに、全調査地点中での検出頻度が高かった11種について種ごとの解析を行ったところ、7種で個体数および生物量(またはどちらか一方)との間に有意な関係が見られた。総じて、本成果は、「eDNA定量メタバ」が河川魚類群集の定量的モニタリングに適した有用なツールであることを示唆している。本研究は、生物多様性の喪失を効果的に減らし、生態系の健康を維持する上で、「種の多様性と豊富さ両面での把握と保全・管理が重要」とする視座から、河川生態系におけるeDNA定量メタバの適用を試み、その導入可能性を拓くとともに、環境DNA調査のさらなる成長に資する、と結んでいる(公表誌:Scientific Reports、DOI:10.1038/s41598-022-25274-3)。
情報源 |
【オンライン情報源1】 京都大学 Latest research news 【オンライン情報源2】 山口大学 新着ニュース |
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配布形式1 |
【交換形式名称】HTML 【版】不明 |
タイトル | 河川魚類群集の多様度を一括把握!環境DNA調査の止まらぬ進化 |
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日付1 |
刊行日: 2023/01/20 |
要約 | 山口大学環境DNA研究センターの辻学術研究員(現・京都大学大学院理学研究科)と赤松教授、福岡工業大学の乾教授らの研究グループは、「定量的な環境DNAメタバーコーディング(以下『eDNA定量メタバ』)」を用いることで、河川に棲む魚の種組成に加え、各魚種の個体数・生物量を同時に推定できることを実証した。環境DNAメタバーコーディングは、水試料などに含まれる生物由来のDNAを分析するだけで、調査対象種にダメージを与えずに調査地に生息する対象生物群を網羅的に検出できる。近年、全国各地で環境DNAを指標とする生物調査が試行され、そのメリットや応用可能性が広く認知されるようになった。しかし、一般的な環境DNAメタバーコーディングには分析上の制約があり、生物群集の構成は推定できるものの、各群集を定量的に評価することは困難であった。そこで本研究では、近年開発された定量的なメタバーコーディング手法(qMiSeq法, Ushio et al. 2018)を適用し、定量化されたeDNA濃度を魚捕獲調査の結果と比較することにより、魚群集の定量的モニタリングツールとしてのqMiSeqアプローチのパフォーマンスを評価することを目的とした。西日本の4河川(調査地点数:21箇所)で採水と電気ショッカーを用いた捕獲調査を行い、両法の結果を比較した結果、eDNA定量メタバにより推定された「環境DNA濃度」と捕獲調査に基づいて推計された「個体数・生物量」の間に有意な正の関係が見られた。さらに、全調査地点中での検出頻度が高かった11種について種ごとの解析を行ったところ、7種で個体数および生物量(またはどちらか一方)との間に有意な関係が見られた。総じて、本成果は、「eDNA定量メタバ」が河川魚類群集の定量的モニタリングに適した有用なツールであることを示唆している。本研究は、生物多様性の喪失を効果的に減らし、生態系の健康を維持する上で、「種の多様性と豊富さ両面での把握と保全・管理が重要」とする視座から、河川生態系におけるeDNA定量メタバの適用を試み、その導入可能性を拓くとともに、環境DNA調査のさらなる成長に資する、と結んでいる(公表誌:Scientific Reports、DOI:10.1038/s41598-022-25274-3)。 |
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分野 | 自然環境 |
種別 | ニュース・イベント:ニュース:国内ニュース |
場所 | アジア:日本 |
キーワード | 捕獲調査、生物多様性、生物群集、生物調査、環境DNAメタバーコーディング、河川生態系、qMiSeq法、定量的モニタリング、生物量、環境DNA |
言語1 | 日本語 |
文字集合1 | utf8 |
主題分類 | 環境 |
ファイル識別子 | 115035 |
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言語 | 日本語 |
文字集合 | |
親識別子 | |
階層レベル | 非地理データ集合 |
階層レベル名 | 国内ニュース |
日付 | 2023/01/26 |
メタデータ標準の名称 | JMP |
メタデータ標準の版 | 2.0 |
国内ニュース | https://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=35048 |
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