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 河川魚類群集の多様度を一括把握!環境DNA調査の止まらぬ進化

発表日:2023.01.20


  山口大学環境DNA研究センターの辻学術研究員(現・京都大学大学院理学研究科)と赤松教授、福岡工業大学の乾教授らの研究グループは、「定量的な環境DNAメタバーコーディング(以下『eDNA定量メタバ』)」を用いることで、河川に棲む魚の種組成に加え、各魚種の個体数・生物量を同時に推定できることを実証した。環境DNAメタバーコーディングは、水試料などに含まれる生物由来のDNAを分析するだけで、調査対象種にダメージを与えずに調査地に生息する対象生物群を網羅的に検出できる。近年、全国各地で環境DNAを指標とする生物調査が試行され、そのメリットや応用可能性が広く認知されるようになった。しかし、一般的な環境DNAメタバーコーディングには分析上の制約があり、生物群集の構成は推定できるものの、各群集を定量的に評価することは困難であった。そこで本研究では、近年開発された定量的なメタバーコーディング手法(qMiSeq法, Ushio et al. 2018)を適用し、定量化されたeDNA濃度を魚捕獲調査の結果と比較することにより、魚群集の定量的モニタリングツールとしてのqMiSeqアプローチのパフォーマンスを評価することを目的とした。西日本の4河川(調査地点数:21箇所)で採水と電気ショッカーを用いた捕獲調査を行い、両法の結果を比較した結果、eDNA定量メタバにより推定された「環境DNA濃度」と捕獲調査に基づいて推計された「個体数・生物量」の間に有意な正の関係が見られた。さらに、全調査地点中での検出頻度が高かった11種について種ごとの解析を行ったところ、7種で個体数および生物量(またはどちらか一方)との間に有意な関係が見られた。総じて、本成果は、「eDNA定量メタバ」が河川魚類群集の定量的モニタリングに適した有用なツールであることを示唆している。本研究は、生物多様性の喪失を効果的に減らし、生態系の健康を維持する上で、「種の多様性と豊富さ両面での把握と保全・管理が重要」とする視座から、河川生態系におけるeDNA定量メタバの適用を試み、その導入可能性を拓くとともに、環境DNA調査のさらなる成長に資する、と結んでいる(公表誌:Scientific Reports、DOI:10.1038/s41598-022-25274-3)。

情報源 京都大学 Latest research news
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機関 京都大学 山口大学 福岡工業大学 国際農林水産業研究センター 土木研究所
分野 自然環境
キーワード 生物多様性 | 生物量 | 環境DNA | 生物群集 | 生物調査 | 環境DNAメタバーコーディング | 河川生態系 | qMiSeq法 | 定量的モニタリング | 捕獲調査
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