岡山大学と（独）理化学研究所は、光合成による水分解反応を触媒する光化学系II複合体の正確な三次元原子構造を解明したと発表した。光化学系II複合体は、藻類や植物の葉の中の葉緑体にあるタンパク質複合体で、太陽の光エネルギーを利用して生物が利用可能な化学エネルギーに変換するとともに、水を分解し、生物の生存に必要な酸素を作り出している。その構造は、SPring-8の放射光X線を用いた解析で明らかにしたが、X線照射の間に放射線損傷を受け、本来の構造とわずかに異なっている可能性があった。今回、研究グループでは、X線自由電子レーザー施設SACLAを用いて、光化学系II複合体の放射線損傷を受けていない本来の構造を、0.195ナノメートルの分解能で詳細に解析することに世界で初めて成功した。この成果は、光合成における水分解反応機構の解明につながり、今後、太陽光エネルギーを高効率で電気・化学エネルギーに変換する「人工光合成」の開発が進めば、エネルギー問題、環境問題、食糧問題の解決が期待されるという。