国環研など、BECCSの大規模実施を想定した灌漑の効果を検証
発表日:2021.07.06
国立環境研究所、ポツダム気候影響研究所、立命館大学および京都大学からなる研究チームは、バイオエネルギー利用とCO2回収・貯留を組み合せた技術(BECCS: Bioenergy with Carbon Capture and Storage)を世界規模で実行した場合、水資源の制約を受け、大気から除去できるCO2は僅かであることを明らかにした。BECCSは、カーボンニュートラルとネガティブエミッションを同時に実現し、パリ協定の長期目標達成に貢献する有望な技術と見られている。しかし、大規模な実施には専らエネルギー作物を栽培する広大な農地が不可欠であり、単位面積当たりの収穫量を向上させるために大量の灌漑用水を必要とする。同研究チームは、BECCSの大規模実施において生じる地球規模の課題を踏まえ、地球の水循環と人間の水利用の時空間変化をシミュレーションできる全球水資源モデルH08(解像度:50 km格子)を用いて、世界のエネルギー作物の栽培可能面積、全球のBECCS最大実施可能量、エネルギー作物生産に伴う追加的な灌漑取水量を推計した。その結果、今世紀末までのBECCS最大実施可能量(単位:Gt C/年)は、無制限に灌漑を行えば60〜71%となるが、他の水資源利用を考慮した「持続可能な灌漑」を行うと5-6%に過ぎないということが分かった。