バイオ燃料は、バイオマス(生物資源)を原料とする燃料のことです。地球温暖化対策が緊急課題となる中、化石燃料を代替する燃料として利用拡大が期待されています。バイオ燃料を燃焼させた場合にも、化石燃料と同様に二酸化炭素(CO2)が必ず発生します。しかし、植物はそのCO2を吸収して生長し、バイオマスを再生産するため、全体として見れば大気中のCO2が増加することはありません(カーボンニュートラル)。
図1 化石燃料(左)とバイオ燃料(右)
出典:交通安全環境研究所「バイオ燃料はカーボンニュートラルか?」
https://www.ntsel.go.jp/column/column002/
※掲載内容は2017年3月時点の情報に基づいております。
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現在、バイオ燃料としては、主に以下の3つが広く利用されています。
バイオエタノールは、サトウキビなどを発酵・蒸留して製造されるエタノールです。ガソリンとの任意の濃度での混合利用が一般的で、混合ガソリンは、エタノールの混合比率によってE3(3%混合)、E10(10%混合)と表記します。バイオエタノールとイソブテンから合成されるETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)というバイオ燃料もあります。
バイオディーゼルは、菜種油などから製造されるディーゼルエンジン用燃料です。軽油と混合して使用されるのが一般的で、こちらも混合比率によって、B5(5%混合)、B20(20%混合)などと表記されます。第1世代BDFの脂肪酸メチルエステル(FAME)、第2世代BDFの水素化植物油(HVO)などがあり、欧州を中心に広く利用されています。
バイオガスは、家畜排泄物や食品廃棄物を発酵させたときに生じるガスから製造されます。主な成分はメタンで、発電や熱供給に利用されるのが一般的です。欧州では、ドイツでの生産量が特に多く、国内で7,000基を超えるプラントが稼働しています。
バイオ燃料の原料となり得るサトウキビやトウモロコシなどは農産物です。米国では2000年代にトウモロコシ価格が高騰するという問題が起きましたが、この一因として、燃料用の生産が増えたことにより、食料用の需給が逼迫した可能性が指摘されています。またアジアでは、畑を作るために山林を切り拓くという事例も見られます。これでは、CO2の減少に繋がりません。
図2 トウモロコシ価格とバイオエタノール導入量の推移
出典:石油連盟「石油業界のバイオ燃料への取組みと持続可能性等の課題について」 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/20120719_c.pdf
バイオ燃料の生産が活発化するにつれ、食料との競合や生態系の破壊といった、様々な問題が表面化してきました。単に生産量を増やせば良いということではなく、ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)削減効果や土地改変の効果を評価し、持続可能性を重視する必要があるということになり、ライフサイクルアセスメントとして各国で様々な制度が導入されています。
たとえばEUでは、再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive:RED)により、化石燃料と比較した場合のGHG削減率が指定されています。この削減率は段階的に強化され、2016年までは35%、そして2017年以降は50%になる見込みです。この高い削減率を実現するためには、単にバイオ燃料を製造するだけでなく、原料採取から燃料流通までを通した様々な対策が求められます。
[1] European Commission. Sustainability criteria,
https://ec.europa.eu/energy/en/topics/renewable-energy/biofuels/sustainability-criteria, (参照 2017-01-25).
[2] 川野大輔. "バイオ燃料はカーボンニュートラルか?". 交通安全環境研究所. 2007,
https://www.ntsel.go.jp/column/column002/, (参照 2017-01-25).
[3] 石油連盟. 石油業界のバイオ燃料への取組みと持続可能性等の課題について. 2012,
http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/20120719_c.pdf, (参照 2017/01/25).