東大など、国産アワビにおける種分化の兆しを同定
発表日:2021.07.27
東京大学と東北大学などの研究グループは、アワビの種分化プロセス解明に迫る遺伝学的証拠を提示した。アワビなどの海産無脊椎動物は種分化が起きにくい生物と見られているが、北アメリカ沿岸のアワビ類において配偶子の変異をきっかけとする「生殖的隔離」の可能性が示唆されている。一方、日本沿岸で漁獲されている複数種の大型アワビは実験室下で交配できることから、種分化の途上段階にあると考えられていた。同研究グループは、国産アワビ3種のゲノム全域の遺伝子解析を行い、分子系統樹を作成するとともに、ゲノムの混ざり合いや過去の動態(集団のサイズ、相互の遺伝子流動の有無)を解析した。その結果、3種はいずれも北アメリカ沿岸に生息していた祖先種から種分化したもので、生殖的に隔離されていることが遺伝学的に確かめられた。また、ゲノムの一部を共有している地域集団が見出されたことから、生態的特徴(生息水深の違い)が種分化のきっかけになったことや、亜種と近縁種が交雑を伴いながら、今まさに種分化しようとしていることが裏付けられた。
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