国際農研など、GHG削減につながる多収コムギ品種を開発
発表日:2021.08.31
国際農林水産業研究センター(国際農研)は、国際コムギ・トウモロコシ改良センター、バスク大学、日本大学生物資源科学部と共同で、穀物生産における亜酸化窒素(N2O)の削減につながる多収コムギ品種を開発し、インド穀倉地帯における技術展開を計画していると発表した。生産性向上を図るために投入された窒素肥料の過半は作物に吸収されず、農地外に溶脱・流出している。こうした窒素損失は土壌微生物の「硝化」によって引き起こされており、追加的な施肥を抑え、環境負荷を低減する上で、硝化を抑制する技術開発が進められている。国際農研は、作物自身が根から物質を分泌し硝化を抑制する現象(BNI: Biological Nitrification Inhibition)に着目した国際的な研究コンソーシアムを主導しており、今回、野生コムギ近縁種が有するBNI能を実用に堪える国際多収品種に導入することに成功した。BNI能は2倍程度まで強化され、圃場における硝化菌の数の抑制、硝化速度およびN2O排出量の低下が確認された。6割の窒素施肥量を削減しても収量が減らず、タンパク質含量や製パン特性も遜色ないことも分かった。一方、窒素代謝が活発となり、低窒素施肥条件下でも効率的に窒素を取り込んでいる様子が観察された。硝化の緩和のみならず、低投入農業への適応が期待できる、自然に基づく窒素問題の解決策であるという。
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