JAEA、幹材の放射性セシウム濃度予測を実現
発表日:2022.01.06
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、樹木内部の木化した部分(以下「木部」)における放射性セシウム(137Cs)の動きや濃度を詳細に再現する計算モデルを開発した。福島第一原子力発電所事故の影響を受けた地域では、林産物等の出荷制限解除が希求されている。一方、木部の137Cs汚染については、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故後に世界的な研究が盛んに行われ、樹木内の137Csの動き(以下「移動プロセス」)が明らかになってきている。しかしながら、既存の137Cs濃度予測モデルは移動プロセスを考慮せず、実観測データに依存しているものが多い。JAEAは、福島県内の森林については、観測データが乏しいことや、事故当時に葉がなかった落葉樹が広く分布しているといった特徴から、既存モデルの適用が困難であると考え、森林内の水循環や植物成長といった物質の動きを包括的にとらえ、移動プロセスの詳細を計算する汎用的なモデル「SOLVEG-R」を新規開発した。SOLVEG-Rを用いて福島県内2地点の森林(常緑樹、落葉樹)を解析した結果、移動プロセスの詳細メカニズムが明らかになった。また、吸収経路ごとの137Cs割合も判明し、事故後50年間にわたる汚染状況の変化を予測することに成功した。木部の137Cs濃度は、今後1年に3%の割合で減少するという。気象データさえあれば林床の落葉層の放射性セシウム動態や樹木の成長なども計算できることや、樹木の地上部を部位ごとに評価できることなどを、SOLVEG-Rの主な特徴として挙げている。除染作業や森林再生による137Cs濃度低減効果の評価手法としても、活用・展開が期待できるという。今後は、樹木内の137Csの動きについて、樹種ごとの差異を反映するなどして、モデルの改良を進めていくとのこと。
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