農工大など、海洋生物のコロナごみ摂食に警鐘
発表日:2022.02.10
東京農工大学と東京大学大気海洋研究所は、日本近海のウミガメ類がコロナごみを摂食していることを確認した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、使い捨てマスクや手袋といった個人用防護具(PPE)が急速に普及した。PPEの普及と同時に、プラスチック素材でできている使い捨てマスク等のごみも急増している。その一部は人間のポイ捨てなどによって海洋に流出しており、ウミガメ類のプラスチック誤飲・摂食事例が報告されていることから、PPEによる海洋生態系への影響が懸念されている。東京大学大気海洋研究所は15年以上にわたり、岩手県沿岸におけるウミガメ類の生態を調査している。2021年8月に定置網で混獲されたアオウミガメの排泄物を調べた結果、過去の調査では一度も見られることがなかった「不織布マスク」の未消化物が確認された。さらにポリマー分析を行ったところ、それがポリプロピレン製であることが判明した。製品の耐候性を高めるために、プラスチック素材には紫外線(UV)吸収剤などが添加されている。東京農工大学が市販されている5社のマスクを分析した結果、4社の製品から6種類の「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」が検出された。あるメーカーの製品では、内分泌攪乱作用が指摘されているUV329が848ng/gと比較的高濃度となっていたという。今回の調査分析を通じて、海洋生物がマスクを誤飲することでプラスチックの添加剤にも曝露される可能性がある。PPEの廃棄物管理を一層徹底し、安全な添加剤への変更などの早急な対策が必要であると述べている。