京大など、小笠原・琉球・マリアナに点在する同属植物を線で結ぶ
発表日:2022.03.30
京都大学、東京都立大学および琉球大学の共同研究グループは、小笠原諸島の固有植物の起源解明に向けた取組の一環として、キョウチクトウ科ヤロード属の類縁関係を解明した。小笠原諸島は、日本の代表的な「海洋島(過去に大陸と地続きになったことがない島々)」である。動植物が大陸と隔離されたまま独自の進化を遂げてきたことから、固有の生物(相)・生態系を有している(2011年6月「世界自然遺産」登録)。海洋島の固有種の起源地や祖先種を絞り込む作業は容易ではない。小笠原諸島の固有植物の地理的な起源については主に3つのルート(日本本土要素、オセアニア要素、東南アジア要素)が想定されているものの、その詳細は十分に理解されていなかった。同研究グループは、分布域が広く(インド洋諸島~熱帯アジア~太平洋諸島)とりわけ起源地等の特定が難しい「ヤロード属」に焦点を当て、同属の種分化過程を調査した。各自生地の野外調査や、南硫黄島・北硫黄島における集中的な調査を通じて、ヤロード属の網羅的なサンプリングが実現した。得られた多様な試料とDNAデータベースに登録されている塩基配列データを利用し、分子系統解析を行った結果、小笠原諸島の森林に広く生育する「ヤロード」は琉球列島のシマソケイなどと近縁で、南硫黄島等の火山列島のみに生息する「ホソバヤロード」はマリアナ諸島のマリアナヤロードと近縁であることが判明した。また、両種は約100~200万年前に近縁種と分岐したことが示唆された。海洋島では単一の祖先種が複数の種に分化する「適応放散」が広く知られている。しかし、今回の知見は、別々の祖先種が小笠原諸島にたどり着き、独立に進化したことを強く支持しており、同諸島における植物相の進化的起源がいかに複雑であるかを示している。ホソバヤロードは南硫黄島等の形成(数万~十数万年前)よりも前に分岐しており、小笠原~マリアナ経路のさらなる検証が必要であるという。他の固有植物についても形成過程の理解深化を図ることで、小笠原諸島独自の生態系保全への大きな活力となることが期待できる、と述べている。
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