旭川高専と極地研など、氷河上に生息する「菌類」絶滅のおそれに警鐘
発表日:2022.04.21
旭川工業高等専門学校と国立極地研究所、カナダのラバル大学からなる研究グループは、環境変動により氷河上に生息する菌類が生息場所を失い、絶滅の危機に瀕していると指摘した。極地では、気候変動に伴い氷河が後退して地面が露出した地域(氷河後退域)が拡がりつつある。国立極地研究所は、北極・氷河域における調査を通じて、氷河後退域の生態系や物質循環に大きな影響を与える、菌類相の変化プロセスを明らかにしてきた(Tsuji, M. et al., 2016)。これまでの調査では、氷河後退域では菌類相の多様性が豊かになりつつあることが示唆された。今回、「氷河上の菌類」に主眼をおいた調査が行われた。調査場所は、世界最北の有人島とされる、カナダのエルズミア島・北海岸にあるWalker氷河の縁部。同氷河は高緯度地域でも著しく融解が進んでおり、2013~2016年の3年間の氷河後退速度は1959年〜2013年までの速度の約3倍まで加速している。2016年7月に氷河上2か所・氷河後退域7か所において試料採取を行った結果、合計325株の菌類が分離された。さらに、それらの系統解析・種構成のクラスター解析を行ったところ、氷河上と氷河後退域に生息する菌類の種構成は大きく異なり、氷河上から見つかった菌類(新種、未報告種を含む)の多くは、氷河後退域では見つからなかった。氷河上の菌類は相対的に多様性が低く(10:13)、氷河の喪失はそれらの生息場所(適応した場所)を狭めることになる。海氷の縮小によりホッキョクグマの生息場所が減ずるのと同様の事例であり、菌類のみならず、より高次な生物の多様性調査などを進め、希少な菌類の保存・活用にも取り組んでいきたい、と述べている。
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