餌経由のナノプラスチック摂取でマダイ仔魚の生残率が低下
発表日:2025.12.23
長崎大学総合生産科学研究科(水産学系)と水産学部の研究グループは、海産魚のマダイ仔魚に対するマイクロプラスチックとナノプラスチックの影響を、摂取経路の違いに着目して比較した(掲載誌:Science of the Total Environment)。
実験では、蛍光標識したポリスチレン粒子を用い、直径3マイクロメートルのマイクロプラスチックと0.2マイクロメートルのナノプラスチックを設定した。暴露方法は、水中の粒子を直接飲み込む方法と、粒子を取り込んだワムシを捕食する方法の2種類を構成し、コントロールを含む5区で比較した。暴露濃度は200個毎ミリリットルに統一し、ふ化後2日齢から12日間にわたり生存率と成長を測定した。加えて、抗酸化酵素(SOD、CAT)とストレス・免疫関連遺伝子(HSP70、GSTA1、IL-1βなど)の発現を解析した。
その結果、ナノプラスチックを餌経由で摂取した区で生存率が最も低下し、同じナノでも水中直接摂取より影響が大きかった。さらに、酸化ストレスの指標となる抗酸化酵素については、細胞内で活性酸素を分解する酵素(SOD)の活性が全ての処理区で上昇し、餌経由のナノで最大となった。一方、過酸化水素を分解する酵素(CAT)の変化は限定的であった。また、遺伝子発現では炎症関連の上昇に加え、通常はストレスで増加するHSP70が低下するなどの変動が確認された。
研究グループは今後、自然海域に近い濃度条件での実験や、体内での粒子の動態解析を進める方針を示している。