東北大と国環研、水銀ばく露と妊娠糖尿病に関する新知見(エコチル調査)
発表日:2022.05.20
東北大学と国立環境研究所は、妊婦の血液中の水銀濃度が高い場合、「妊娠糖尿病」の発症頻度が高まり、健康影響が生じやすくなると報告した。妊娠糖尿病は、妊娠を機に発症する糖代謝異常で、妊婦自身にも出生児にも悪影響を及ぼす。喫煙や肥満、高年齢での出産などが主な発症要因と見られている。両者は、海外の最新研究において妊娠中の水銀ばく露の影響が指摘されていること等を踏まえ、全国約10万組の母子を対象とする大規模な疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(愛称:エコチル調査)」の一環として、本邦における当該影響の現状やリスクを検証した。妊娠中期・末期に妊娠糖尿病を発症した妊婦の割合は2.1%と算出された(対象者:78,964名)。また、対象者の血液中の水銀濃度(中央値)は3.6 ng/gであることが分かった。本調査研究では、さらに健康影響が観察される水銀濃度を明らかにするための詳細解析が行われている。当該データを水銀濃度の低い方から高い方に5つの群に分割し、低い群を基準とする発症リスク評価を行ったところ、水銀濃度が中央値よりも高い群のオッズ比が1.3前後(発症頻度の若干増)となる傾向が示唆された。水銀濃度4.99 ng/g以上の場合は、妊娠糖尿病への直接的な影響も示唆された。妊娠糖尿病の発症要因は多様であり、水銀ばく露の寄与は小さいと考えられる。引き続き、妊娠糖尿病の発症メカニズムの理解を進める必要はあるが、厚生労働省が示しているメチル水銀含有量の高い特定の魚の摂取方法を変更するといった措置は当面不要、と結んでいる。
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