幼児期の神経発達と胎児期の水銀・セレンばく露に関する検証結果(エコチル調査)
発表日:2022.08.30
北海道大学(エコチル調査北海道ユニットセンター)ほか道内2大学、国立環境研究所(同調査コアセンター)および名古屋市立大学は、妊婦の血中水銀・セレンと4歳までの子どもの神経発達との関連を解析した。幼児期における「神経発達の遅れ」は、学童期以降の神経発達の疾患につながる可能性があると指摘されている。海外研究では、母親が妊娠中にメチル水銀やセレンにばく露することと子どもの「神経発達の遅れ」との関連を示す、疫学的な知見が報告されている。メチル水銀は胎盤を通過する化学物質であるため、成人のみならず胎児への健康影響が懸念されている。日本でもメチル水銀の摂取実態に関する調査が行われ、主要ばく露源である魚介類の水銀含有量について厳格な基準が設けられている。一方、セレンはいくつかの同素体があり、一部は毒性を示すが、抗酸化作用を有するミネラルとして認知されており、水銀の毒性を軽減させる効果なども示唆されている。北海道大学等は、水銀やセレンが子どもの「神経発達の遅れ」におよぼす影響が十分理解されていないことや、日本(日本人)における関連研究報告が少ないことをかんがみ、エコチル調査データを活かした疫学分析フレームを考案した。約5万組の母子データを解析対象としている。子どもの神経発達については、米国で開発されたASQ-3という調査票(日本語版)を用いて、保護者の回答をスコアリングし、コミュニケーション・粗大運動/微細運動・問題解決能力などの発達度合いを評価した。母親のデータには、血中水銀およびセレン濃度のみならず、4歳までの子どもの神経発達との関連因子(出産暦、喫煙習慣、子どもの性別等)が紐づいているため、それらを考慮した研究デザインが実現した。多様な集団の解析結果を検証した結果、「血中水銀・セレン濃度と4歳までの子どもの神経発達との関連は認められず、子どもの健康状態に影響するとは考えられない。」と結論している。
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