セメント・コンクリート部門では「需給一体」の緩和策が肝要! 国環研
発表日:2022.08.02
国立環境研究所は、セメント・コンクリート部門の「2050年カーボンニュートラル」は、供給側の脱炭素化技術だけでは成し得ず、需要側の取り組み(範囲:建設、製品利用、廃棄)を早急かつ並行実施することにより達成できると推計した。セメントの焼成は石灰石(CaCO<sub>3</sub>)から脱炭酸するプロセスであり、高温熱の供給に伴い大量のCO2が排出される。また、コンクリート二次製品の生産工程からも大量のCO2が排出されており、セメント・コンクリート部門の脱炭素化は他部門(例:発電、運輸等)よりも困難と見られている。「2050年カーボンニュートラル」宣言以降、当該部門では供給側における脱炭素化技術の導入が進んでいる。他方、需要側の取り組みは十分評価されておらず、当該部門の脱炭素化戦略は供給側の施策に依存した形となっている。このような情勢を踏まえ、同研究所は、セメント・コンクリート部門のCO2排出削減策(供給側:9対策、需要側:7対策)を精査し、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた道筋を検証した。今回の検証では、国の公式なCO2排出勘定に含まれていない「コンクリートの炭酸化(CO2固定化)」を考慮しており、物理化学モデル・経済モデルなどを組み合わせた総合的な評価が行われている。2019年の日本におけるセメント・コンクリート循環(原材料の調達から解体に至るまでの流れ)におけるCO2排出・吸収量を見積もったところ、コンクリートの炭酸化は生産時CO2排出量の約4分の1を吸収していることが分かり、供給側において炭素回収貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)などの対策を最大限実施した場合、カーボンニュートラル達成に必要な排出削減量の最大80%を削減できることが明らかになった。これらの結果は、約20%のギャップの存在や、カーボンニュートラル達成には供給側での対策だけでは不十分であることを物語っている。一方、コンクリート需要の約半分は医療や教育等のサービス需要に起因していることや、需要側の対策(素材を過剰に使用する設計の回避、建設物の長期利用、共有化、都市機能の集約化、解体部品の再利用等)を組み合わせ、早急に実施した場合、CCS一辺倒の戦略が様変わりし、ギャップを埋めることができることも示唆された。供給側と需要側の一体的対策をカーボンニュートラル戦略の中心に位置付け、数値目標に基づいて計画的に推進し、コンクリートの炭酸化やセメント・コンクリートの効率的な利用等(ex. CCU:Carbon Capture and Utilization)に関する議論やコンセンサス形成を急ぐべきだと提唱している。
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