拡がる環境DNA分析の可能性!スイゲンゼニタナゴへの応用展開
発表日:2022.12.21
岡山大学と農研機構の共同研究グループは、スイゲンゼニタナゴ(学名:<i>Rhodeus atremius suigensis</i>)の在否を推定できる環境DNA検出法を確立した。同種はかつて広島県東部・岡山県から兵庫県西部(千種川水系)にかけて分布していたが、千種川水系では1977年に採集されたのを最後に確認されておらず、兵庫県内では絶滅したと見られている。人為の影響等による生息地の喪失が懸念されるなか、2002年に「種の保存法」に基づく施策において「国内希少野生動植物種(魚類:全10種)」に指定された。環境省RL2020(汽水・淡水魚類)では絶滅危惧IA類となっている。本手法は、スイゲンゼニタナゴの保全策を講ずるに当たり、同種に特化したスピード感のある調査手法の構築が不可欠、という視座から開発されたもの。希少種の場合、個体数が少ないことから目視調査は難しく、ターゲットにダメージを与えることはできないことから漁具を用いた捕獲調査等はなじまない。そこで、近年さまざまな生物調査に活用されている「環境DNA分析」に着目し、現生息地における採水、DNA断片の抽出、リアルタイムPCR法という流れをデザインし、水槽で遊泳させる室内実験(個体数:1~5匹、遊泳時間:3・30・60分間)を行った。その結果、スイゲンゼニタナゴのDNAを種特異的に増幅させることに成功し、スイゲンゼニタナゴの個体数や遊泳時間と環境DNA濃度の間に明瞭な関係があることが見出された。本研究では、こうした定量性の確認を経て、現生息地(地点数:農業水路内48ヵ所、区間長:約700 m)における環境DNA調査と採捕調査を実施している。一連のフィールド調査を通じて、本手法が野外における分布推定に極めて有効であることが示唆された。簡便かつ高精度なモニタリングが可能となったことで、現生息地の適切な管理はもとより、知られざる生息地の発見など期待され、スイゲンゼニタナゴの保全に大きく貢献できる、と展望を述べている。
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