深海でも生分解性プラの微生物分解は進む!海洋プラごみの削減に追い風吹くか
発表日:2024.01.26
「微生物産生ポリエステル(PHA)や多糖類を原料とするプラスチック(以下『生分解性プラスチック』)」は深海環境下でも生分解される--東京大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所および日本バイオプラスチック協会が世界初の実証成果を発表した(掲載誌: Nature Communications,DOI: 10.1038/s41467-023-44368-8)。日本近海には海洋プラスチックごみの集積スポットが点在している。近年では日本のはるか東(房総半島の約500 km沖)を流れる黒潮続流直下の深海平原(水深6,000 m付近)で大量の使い捨てポリ袋等が見つかった。石化由来プラスチックの消費・排出削減のみならず、生分解性プラスチックの一層普及といった抜本的な対策が求められている。本邦では、さまざまな環境条件の下で生分解度を審査し、安全性等の基準をクリアした製品に「生分解性プラマーク」が付与されている。これまで、ポリ乳酸を始めとし、活性汚泥やコンポスト、土壌や河川・海岸で生分解される数々の製品が実用化されてきた。しかし、海洋プラスチックごみが最終的に行き着く「深海底」において生分解性プラスチック等が微生物によって本当に生分解されるか否か、実環境での検証は行われていなかった。本研究では、JAMSTECの有人潜水調査船・しんかい6500と東京下町工場を中心とするプロジェクトで開発されたフリーフォール型深海探査機・江戸っ子1号を駆使し、神奈川県の三崎沖(水深757 m)から日本最東端の南鳥島沖(水深5,552 m)にわたる多様な深海底(5地点)にサンプルを設置して観察する、壮大な実海域実験が行われた。その結果、どの地点(海底環境)でも生分解性プラスチック(ポリ乳酸を除く)は生分解されることが明らかになった。併行実施した菌叢解析の結果を考慮したところ、サンプルの生分解はマリンスノーの堆積、微生物の付着、好気的条件から嫌気性条件への変化・優占する微生物の変化といったプロセスを経て進行することが分かった。サンプル表面に付着した微生物の中から、PHA分解酵素をコードする微生物が6種類見い出された。それらの微生物は世界中の海底堆積物に存在することから、深海底における生分解性プラスチックの有用性は汎海洋的なものであることが示唆された。なお、生分解性は深度に伴って低くなる傾向がうかがえ、深海底では緩やかに進むと考えられた。
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