ヒトの協力行動は「評判」と「シンプルな社会規範」で進化する!
発表日:2024.08.20
中身が見えるごみ箱の設置や手作りポスターの掲示をきっかけに、ペットボトルの分別に対する高校生一人ひとりの意識が変わり、学校全体に正しい分別行動が根付いた事例がある(例:2023年ベストナッジ賞・環境大臣賞「大阪府立泉北高等学校」)。---進化学的な視座から数多くの報告がなされているヒトの心理や行動について、理化学研究所計算科学研究センターとドイツのマックスプランク進化生物学研究所は、スーパーコンピュータ「富岳」を駆使して解析した。今回の研究では、ヒト社会において非血縁者への協力行動を説明する重要な仕組みのひとつである「間接互恵性」に焦点を当てている。間接互恵性の仕組みや持続性のイメージとして、個人の利他的な行動が社会で観測されると、その「評判」が広まり、第三者が同様の行動を取るという場面が例として挙げられている。進化ゲーム理論に基づく数理モデルを用いて、集団の中にいる各プレイヤーの利得(本研究では「社会規範」と定義)に対して大規模な数値計算を行った結果、社会規範の進化経路を特定することに成功した。新たに得られた知見としては、1)集団が単一のコミュニティから成る場合、協力を促す社会規範が進化することは難しいこと。2)集団がいくつかの小規模なグループから成る場合、協力的な社会規範が進化しやすいこと。3)その際、非常にシンプルな社会規範が重要な役割を果たすことが挙げられる。シンプルな社会規範は、協力行動を常に肯定的に評価し、非協力行動のほとんどを否定的に評価する性質を持つとされている。また、4)どの社会規範が支配的になるか、そして協力行動がどれだけ生じやすいかは、集団の構造に大きく依存するという結果も示された。理化学研究所らは、ヒトの社会的感情の起源の理解や、社会における大規模な協力を実現する仕組みのデザインに貢献する成果、と訴求している(DOI: 10.1073/pnas.2406885121)。
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