前例のない広域観測!積雪アルベド低下メカニズムの解明に迫る
発表日:2024.09.02
積雪面のアルベド(以下「積雪アルベド」)は、雪氷圏の放射収支に大きな影響を与える。近年、衛星観測により北極域の積雪アルベドが低下傾向にあることが明らかになった。積雪アルベドは雪の物理的な特性に依存するが、単結晶の「粒径」の測定結果は観測者間でばらつきが生じる。このため、粒径に代わるパラメータとして「積雪の比表面積(SSA: Specific Surface Area)」が注目され、SSAの測定技術開発が進められてきた。―――国立極地研究所・北極観測センターの青木特任教授は、単分子層吸着量を導出するBET理論を応用したガス吸着式SSA測定装置の運用に取り組み、さらに近赤外光を用いた光散乱技術による「可搬型積分球積雪粒径測定装置(HISSGraS)」の開発に成功した。今回、同装置をグリーンランドで使用した実績を踏まえ、総合研究大学院大学の研究者らと共に、南極氷床内陸で“前例のない多地点観測”を実施した(東南極氷床沿岸から約1,000 km内陸までのルート上で、約2,150地点の積雪表面を観測)。この調査により、SSAの広域分布が明らかになり、その増減傾向やSSAの変動要因が推定できることが分かった。衛星観測や気候モデルで推定されるSSAの検証に役立つデータであり、南極氷床内陸部の積雪に対する温暖化の影響評価の基準、ひいては新たな温暖化監視要素としての位置づけも期待できる成果、と述べている(DOI: 10.5194/tc-18-3513-2024)。
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