光エネルギーを熱に変換するタンパク質が葉緑体保護の鍵
発表日:2024.11.22
北海道大学低温科学研究所の研究グループは、冬季の常緑針葉樹における光エネルギーの熱放散メカニズムを解明した。この研究は、ELIP(Early Light-Inducible Protein)と呼ばれる葉緑体タンパク質の新たな役割を見い出したもの。ELIPは光ストレス下での光合成器官の保護に関与するタンパク質として知られており、これまでの研究では、光合成色素を結合し、光エネルギーを熱に変換する役割を担っていると考えられてきた。同研究グループは、イチイを研究材料とし、ピコ秒単位での蛍光測定や遺伝子発現解析を行い、タンパク質の構造予測などを組み合わせて、ELIPが冬季の葉緑体に大量に蓄積していることを発見した。──冬季の寒冷圏の常緑針葉樹は、低温下で光合成を行うことが困難であり、逆に光合成が活発に行われると光エネルギーが過剰に吸収され、活性酸素が生成される。その際、活性酸素は細胞にダメージを与え、葉の緑色を失わせる原因となる。今回の新知見を踏まえ、同研究グループは、冬季の寒冷圏の常緑樹では、ELIPを介して光エネルギーが熱に変換され、活性酸素の生成を抑制することで葉の緑色を維持するという新たな仮説を提唱している。この成果は、Journal of Experimental Botany誌に掲載された。