山火事で極地エアロゾル濃度が10〜100倍に!氷雲形成メカニズムにも変化もたらす
発表日:2025.02.17
国立極地研究所の佐藤助教を中心とする研究グループは、2023年にカナダで発生した史上最悪規模の山火事で汚染された空気が北極海まで輸送されたことを解明した。研究グループは、2023年9月に海洋地球研究船「みらい」による北極海航海で、雲粒子センサーゾンデやドローンを用いて雲やエアロゾル粒子の観測を行った。その結果、対流圏下層における当時のエアロゾル粒子個数が通常の10〜100倍であることが確認された。また、山火事の影響を受けて、北極海上空では通常よりも高い温度環境(–15℃以上)で氷雲が形成されていたことが観測された。これらの知見から、山火事由来のエアロゾル粒子が北極海での氷雲の形成に影響を与えている可能性が示された。──本成果は、地球温暖化により中緯度の山火事が増加することで、北極海で発生する雲の性質が変化するという新たな視点を提示している。今後、数値モデルや将来予測モデルで用いられるエアロゾル輸送過程や雲物理過程が改良され、雲形成の再現精度が向上することで、海氷減少など北極域の気候予測の精度向上が期待される。