水産研究・教育機構、カレニア赤潮の長期的変化を初解明
発表日:2025.04.11
「海水中のプランクトンが異常に増殖して海水が変色する現象(赤潮)」は、窒素・リン等の栄養塩類、水温、塩分、日照、競合するプランクトン等の要因が複雑に絡んで発生する。赤潮を構成するプランクトンのなかには毒素を産生したり、酸素を大量に消費して魚介類の大量死や人間に健康被害をもたらすものがある。有害な赤潮の発生時に出現するプランクトンは数種特定されているが、なかでも「カレニア・ミキモトイ」は瀬戸内海をはじめ、西日本以外の海域で甚大な漁業被害を引き起こしている。しかし、これまで有害な赤潮の時空間的な変化を巨視的・長期的かつ広域的に把握することはできていなかった。──今回、水産研究・教育機構の研究チームは、「カレニア・ミキモトイの優占による有害な赤潮(以下『カレニア赤潮』)」の過去30年間にわたる変化を詳細に分析した。先ず、全国の水産試験研究機関が保有している1991年から2020年までの赤潮年報データを集約し、期間ごとにばらつきのあった「赤潮」の基準を再定義することで独自のデータセットを構築した。その上で、有害プランクトンの「細胞密度」の変動を解析したところ、瀬戸内海では九州海域の2倍の頻度でカレニア赤潮が発生していることや、2015年に八代海で最高細胞密度66万5千細胞/mLの赤潮が記録されたこと、最も早期に発生した赤潮は1月に、最も遅い赤潮は11月に発生していることなど、新たな知見を得ることに成功した。また、これらの知見から、西日本全域でカレニア赤潮の細胞密度が増加し、発生期間が長期化していることや、カレニア赤潮の発生が早期化している傾向が示唆された。──研究チームは、こうした傾向が海洋温暖化やエルニーニョなどの中長期的な気象現象の影響を受けている可能性が高いと考察している。また、今回開発したデータ処理手法は、他の有害プランクトンにも応用可能であるため、赤潮対策のための基礎情報として、水産業や学術界への貢献が期待できると述べている。
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