東邦大ら、堆積物中のsedDNAで外来巻貝の分布を高精度推定
発表日:2025.10.15
東邦大学・千葉大学・東洋食品研究所の研究グループは、『堆積物中に含まれる環境DNA(sedimentary DNA:sedDNA)』を用いて、アサリを捕食する外来巻貝「サキグロタマツメタ」の存在を高精度に検出する種特異的分析法を開発し、飼育実験によりその有効性を実証した(掲載誌:Estuarine, Coastal and Shelf Science)。
sedDNAは、海底や干潟などの堆積物中に蓄積された環境DNAの一種であり、底質に接触・滞留した生物の活動痕跡(例:粘液、移動痕、捕食痕など)を反映する。現在広く普及・定着している水中の環境DNAよりも、底質に潜む生物の存在を高感度で検出できる。
本研究では、先ずサキグロタマツメタの全ハプロタイプに共通する塩基配列を基に、種特異的なプライマー・プローブを設計している。次に滅菌済み珪砂を用いた水槽実験により、堆積物中から本種のDNAのみを検出することに成功した。検出濃度は最大で10⁸ copies/g sedimentに達し、魚類対象の先行研究と比較しても極めて高濃度であることが示された。特に粘液や移動痕のある堆積物から高濃度のDNAが検出されており、粘液が主要なDNAソースである可能性が高い。
サキグロタマツメタは中国・朝鮮半島原産のタマガイ科巻貝で、1980年代後半以降、外国産アサリの移植放流に伴い日本に侵入。現在では青森県から熊本県までの1府13県に分布し、アサリの漁獲量減少の一因とされている。従来の採集調査では堆積物中の個体を把握できず、分布範囲を過小評価していた可能性がある。今回のsedDNA検出法により、堆積物中に潜む個体の存在を把握できるようになり、分布推定の精度向上と駆除活動の効率化が期待される。
研究グループは今後、野外試料への適用を進め、sedDNA分析を活用した新たなアサリ食害防止策の構築を目指すと述べている。
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