エゾシカ捕獲強化策~高密度地域ほど個体数削減効果が顕著
発表日:2025.10.15
北海道大学大学院文学研究院・上野真由美准教授らは、北海道立総合研究機構、森林総合研究所、東京農工大学との共同研究を通じて、北海道釧路地域におけるエゾシカ(Cervus nippon)の捕獲強化策の効果が地域内で異なることを明らかにした(掲載誌:Journal of Wildlife Management)。
本研究では、1994年から2020年までの27年間にわたる捕獲データと相対密度指標(ライトセンサス調査による発見数、狩猟者の目撃数など)を用いて、釧路地域の23 km²メッシュ単位での個体数変動を解析した。その結果、捕獲強化策(狩猟規制緩和と許可捕獲への奨励金)により、地域全体の個体数は2度減少したが、いずれもピーク時の約14%の減少にとどまっていることが分かった。また、空間スケールを細分化して分析したところ、密度の高いエリアほど捕獲率が高く、個体数削減効果が顕著であることが判明した。具体的には、高密度エリア(≥50頭/km²)では一貫した減少傾向がみられた一方、中密度エリア(25〜50頭/km²)では緩やかな増減が繰り返され、低密度エリア(<25頭/km²)では顕著な変動は確認されなかった。これは、捕獲による個体数削減効果が地域内部で一様ではなく、密度条件に依存することを示している。
研究グループは、「地域全体の個体数管理を効率的に進めるためには、高密度エリアに重点的な捕獲努力を配分することが望ましい」と提言している。本研究は、空間的に詳細な個体数推定に基づく捕獲管理の最適化に関する初の定量的知見であり、今後の有蹄類管理政策の科学的根拠として活用されることが期待される。