中緯度の大気・海洋相互作用が東アジア冬季モンスーンを強化
発表日:2025.11.20
筑波大学と気象庁気象研究所は、東アジアの冬季モンスーン強化に関する新たなメカニズムを解明した。本研究は、過去72年間の再解析データと大気モデルによるシミュレーションを組み合わせ、中緯度の大気と海洋の相互作用が日本の冬の寒冷化に寄与することを示したものである(掲載誌:Geophysical Research Letters)。
従来、冬のモンスーン強弱はエルニーニョやラニーニャなど熱帯海域の現象との関連が注目されてきたが、中緯度海洋の影響は十分に理解されていなかった。本研究では、強いモンスーンが発生するとユーラシア大陸から流出する寒気が北西太平洋を冷却し、海面水温の南北勾配を変化させることが確認された。この変化は日本東方で低気圧性の風の流れを形成し、寒気流出をさらに強化する。シミュレーション実験により、冷えた海が大気下層のストームトラック活動を変化させ、結果として日本付近の気温を一層低下させることが明らかになった。つまり、冷たい空気が海を冷やし、冷えた海が再び大気を冷やすという相互作用が、冬のモンスーンを強める仕組みである。この知見は、厳冬や大雪など異常気象の要因解明に資するだけでなく、季節予報モデルの精度向上にもつながると期待される。
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金および環境省の環境研究総合推進費の助成を受けて実施された。今後は、数値モデルにおける中緯度相互作用の再現性評価と改良を進め、予測精度の向上を目指すという。
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