(独)国立環境研究所、研究情報誌「環境儀」第39号「『シリカ欠損仮説』と海域生態系の変質-フェリーを利用してそれらの因果関係を探る」を刊行
発表日:2011.02.03
(独)国立環境研究所は、同研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第39号「『シリカ欠損仮説』と海域生態系の変質-フェリーを利用してそれらの因果関係を探る」を刊行した。「シリカ欠損仮説」とは、大規模なダムが建設されると、ダム湖にシリカ(ケイ酸)が沈降して海洋への供給量が減少し、海洋生態系に様々な影響を与えるというもの。シリカの供給量減少は、シリカを必要とするケイ藻の発生量に影響し、有害赤潮を形成する渦鞭毛藻類など、シリカを必要としない藻類の発生を助長する可能性がある。さらに、植物プランクトンの種が変化することで、食物連鎖の流れが変化し、海洋生態系の構造自体に影響を与える可能性も懸念されている。今号では、フェリーを利用した海洋生態系の長期モニタリングをもとに、琵琶湖-瀬戸内海水系における栄養塩や植物プランクトンの発生量の変動を分析。その結果、「シリカ欠損仮説」が概ね適用可能なことが明らかになった。このことから、東アジア地域のように経済活動やダム建設が増大しつつある地域では、今後なんらかの対策が必要になると考えられるという。