北極海と北大西洋で海流の変化が継続した場合、海洋循環が地球規模で変化し、世界の気候や生物圏に劇的な影響をもたらす可能性があるとするコーネル大学のグリーン氏らの論文が、11月の「Ecology」誌特別号に掲載された。同氏らは暁新世から現代までの北極海の気候変動のパターンを再現。地球は6500万年の間、北極の氷床や海氷の拡大・縮小の影響を受けつつ、温暖期と寒冷期を繰り返してきたが、現在は間氷期の半ばで、氷床は縮小し、気温は上昇している。そしてこの30年間は、こうした北極の気候と氷床の変化により、大量の淡水が北大西洋に流出して塩分濃度が急低下し、北方の海洋循環が乱れて、海水の成層や海洋生態系が変化している。淡水流入で北大西洋深層流(NADW)の形成が妨げられると、高緯度地域に運ばれる熱量が減少し、氷河期への移行が進む。今後も淡水流入が続くと、21世紀中は持ちこたえられそうだが、21世紀中には地球の海洋循環が乱れ、前回の氷河期の始まりと同様、急に気候が変化する可能性があるという。