環境技術解説

土壌汚染調査

 土壌汚染調査とは、土地取引等の際に、その土地の汚染の有無あるいは汚染状況を把握するために行われる調査のことで、方法は土壌汚染対策法施行規則(平成14(2002)年)に規定されており、以下の3段階からなる。すなわち、過去から現在までの土地の利用状況から汚染リスクを推定する資料等調査、土地を区画に分割し、各区画における汚染の有無を調べる概況調査、深度方向の汚染状況を把握し、資料等調査及び概況調査の結果を元に汚染箇所を特定する詳細調査である。
 土壌汚染は外観からは分かりにくいため、我が国における土壌汚染対策は、他の公害と比較して遅く、土壌汚染対策法が施行されたのは平成15年(2003年)のことである。政府等によって環境基準適合状況の調査に対して助成が実施されていることや、土地売買及び土地資産評価等のために自主的に土壌汚染調査を実施される動きが広がっていることを受け、平成18年度までは土壌汚染調査・対策事業の受注高及び受注件数は増加傾向にあったが、最近は減少傾向にある。
 また、土壌汚染対策に係る時間・費用及び精度を向上させるための技術開発・研究活動も活発である。環境省は、現在実用段階にある低コスト・低負荷型の土壌汚染調査・対策技術の現場実証試験を実施し、それらの技術の普及促進を図ることを目的として、「低コスト・低負荷型土壌汚染調査・対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」事業を実施している。図は、同事業において平成19年度に採択された、超小型重金属分析装置及び、同装置を搭載し、第一種特定有害物質と第二種特定有害物質を測定することが可能な現場設置型ミニラボである。

図 超小型重金属分析装置「Geo-REX」(左)及び、現場設置型ミニラボ(右)
出典:環境省ウェブサイト 「平成19年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査結果」
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=12241&hou_id=10273

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1.背景

1)土壌汚染対策法制定の経緯

 土壌汚染は、他の典型七公害(他に、大気汚染、水質汚濁、地盤沈下、騒音、振動、悪臭がある)同様、高度経済成長期の頃には既に発生していたと考えられているが、外観からは発見が困難であること、明らかな健康被害を生じさせにくいこと等から、判明することが少なかった。そのため、土壌汚染問題に対する取組みは、限定的、間接的なものに留まっていた。
 土壌汚染問題に対する直接的な法律に、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(1970)が挙げられるが、これは人の健康を損なう農畜産物が生産されたり、農作物等の生育阻害が引き起こされたりするのを防止するのが目的であり、対象はあくまで農用地に限られていた。また、1967年に制定された公害対策基本法において、他の公害同様に環境基準を設けて公害を防ぐことが規定されてはいたが、その後の土壌汚染対策は、排ガス、排水、化学物質等による土壌の汚染を防ぐというものであり、それぞれ、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、農薬取締法等による規制の一部に過ぎないものだった。
 その後、市街地や工場・研究所跡地の再開発等が盛んになると、開発対象地の土壌汚染が問題視されるようになり、1990年に土壌汚染に関する環境基準が制定された。さらに、この基準の制定以後、基準値を超過する事例が多く見られたこと、また、典型七公害の中で土壌汚染のみに法規制が無かったことから、法制定の機運が高まり、平成15年(2003年)に土壌汚染対策法が制定された。
 図1は、土壌環境基準等超過事例数の推移である。近年の増加傾向は、環境基準の制定などの土壌汚染に対する取組みが活発になり、地方公共団体による環境基準適合状況の調査及び、土壌汚染調査・処理技術の研究・開発に対する助成が実施された結果である。

注:VOC=Volatile Organic Compounds揮発性有機化合物

図1 土壌環境基準等超過事例数の推移

出典:環境省ウェブサイト
「環境統計集『5.31 土壌環境基準等超過事例数の推移』」を基に作成
http://www.env.go.jp/doc/toukei/contents/index.html


2)土壌汚染対策法の定める土壌汚染調査の種類

 我が国では、平成15年2月の土壌汚染対策法施行を契機として、土壌汚染調査の実施件数が増えている。同法で定められた調査義務のみならず、同法の制定によって土壌汚染リスクに対する認識が高まり、不動産評価に土壌汚染リスクが組み込まれたことによって自主的な調査件数も増加してきたといえる。
 同法は、工場等の敷地であった土地の所有者等に対し、移転や廃業に伴い、現在の土地での操業をやめる場合(第3条)、あるいは、操業の有無にかかわらず健康被害が生ずる恐れがあるとして都道府県知事から調査命令が発せられた場合(第4条)に、土壌汚染状況調査を求める。調査結果は、都道府県知事への報告が求められる。表1は、同法第3条に基づく調査と第4条に基づく調査の概要である。調査対象地と対象物質が異なることに留意が必要である。
 土壌汚染状況調査(調査手順は2参照)の結果、土壌の汚染状態が環境基準を超過している土地は、指定区域として指定・公示される。指定区域内の土地での土壌汚染で、人の健康被害が生じる、または生じる恐れがあると都道府県知事が認めた場合には、汚染の除去等の措置を命じられる可能性がある。
 また、同法では、第3条、もしくは第4条に基づく調査を担う機関として指定調査機関を指定している。平成24年6月15日現在で1,389機関が指定されている。

表1 土壌汚染対策法に基づく調査対象地と調査対象物質
条文根拠 調査対象地 調査対象物質
法第3条調査 使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地の全ての区域 使用が廃止された有害物質使用特定施設において使用等していた特定有害物質及びその分解生成物
法第4条調査 都道府県知事が当該土地若しくはその周辺の土地の土壌汚染の状態、地下水の特定有害物質による汚染の状態を勘案し、人の健康に係る被害を防止するため必要な限度において定めた区域 都道府県知事が、土壌汚染が明らかである又はおそれがあるとして書面にて示した特定有害物質

出典:経済産業省ウェブサイト 『平成15年度 電気めっき事業者のための土壌汚染対策ガイドライン策定事業報告書』 (2004.3)を元に編集


3)土壌汚染調査市場の現状

 我が国では、平成15年2月の土壌汚染対策法施行により、市場が創出されている。図2は、我が国の土壌汚染調査・対策事業の受注高及び受注件数の推移である。いずれも、平成18年度までは増加が続いていた。しかし、平成19年度からは受注高が、平成20年度には受注件数も減少に転じた。また、調査及び対策の単価は、全体として下落傾向にある。
 土壌汚染調査・対策事業者を会員とする社団法人土壌環境センターによると、平成20年度における土壌汚染状況調査・対策受注実績 11,591件のうち、75%にあたる8,736件が、調査によるものである。一方、受注高ベースになると、総額1,345億円のうち、調査によるものは10%に過ぎない。対策に比べて、調査は案件数が多いものの、単価が低いビジネスとなっている。
 なお、土壌汚染調査の種類には、土壌汚染対策法や地域の条例・要綱を契機とするもの、土地売買及び土地資産評価等のための自主的なものがあるが、大部分(90%)は後者の場合である。また、調査の結果、土壌汚染対策法を契機とするもので78%、それ以外のもので50%が、"土壌汚染あり"と判定されている。

図2 土壌汚染調査・対策事業実績の推移

出典:一般社団法人土壌環境センター ウェブサイト
「土壌汚染状況調査・対策に関する実態調査結果(平成20年度)」
https://www.gepc.or.jp/04result/press20.pdf


2. 技術の概要

 土壌汚染調査の手順は、自主的な調査においても土壌汚染対策法施行規則(平成14(2002)年)で定められた方法に準拠することが一般的である。土壌汚染調査の一般的な手順を図3に示す。近年、土壌汚染対策を以下の3つのフェーズに分けて表現することが多い。

  • フェーズ1:1)資料等調査
  • フェーズ2:2)概況調査、3)詳細調査
  • フェーズ3:土壌汚染対策(図の中には無い)

 ここでは、フェーズ1及び2に該当する3つの調査について、その概要と調査時に使用される機器等について解説している。フェーズ3については、「土壌・地下水汚染対策」及び「バイオレメディエーション」の項目を参考にされたい。

図3 土壌汚染調査の基本フロー

出典:経済産業省ウェブサイト
「電気めっき事業者のための土壌汚染対策ガイドライン策定事業報告書」を基に作成

1)資料等調査

 土壌汚染調査の第一段階として、過去から現在に至るまでの土地の利用状況及び土地の特性を調査する『資料等調査』を実施する。これは、土地の利用履歴、特定有害物質の使用等の状況、行政資料、古地図・航空写真、地質・地下水の特質、管理文書の照査、行政資料の参照、現地視察、関係者へのヒアリングなどにより得られる情報を集積して、後段の『概況調査』に進む前の段階で、土壌汚染の可能性を推定するものである。
 土壌汚染対策法施行規則では、この調査により以下の3分類を行うものとしている。

  • [1] 土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地
  • [2] 土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地
  • [3] 土壌汚染が存在するおそれがあると認められる土地

 図4は、資料等調査によって、土地利用状況に基づいて土地を3種類に分類した結果である。有害物質を使用していた土地や、それらと隣接した土地では、土壌汚染が存在するおそれがあると認められている。

図4 土地利用状況にもとづく汚染の恐れ分類例

出典:国際航業株式会社 ウェブサイト
「土壌汚染調査対策(環境デューディリジェンス) 資料等調査(Phase 1)」
https://biz.kkc.co.jp/kankyo/research/history/

2)概況調査

 概況調査では、資料等調査を参考に、"土壌汚染が存在するおそれがある"あるいは"土壌汚染が存在するおそれが少ない"と考えられた土地を対象に、汚染している可能性がある物質の分布範囲を把握する。
 土壌汚染対策法施行規則では、調査対象区画が恣意的に設定されるようなことがないよう、区画選定方法を定めている。基本的には、調査対象地の最も北に位置する地点(複数ある場合は、その中で最も東に位置する地点)を格子起点とし、その起点から東西方向及び南北方向に10m間隔で引いた線により区分(10m格子)することとしている。ただし、土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地では、まず30m格子に1点の割合で試料採取を行い(図5(a))、その結果、指定基準値を超える汚染物質が検出された場合には、改めて単位区画10m格子ごとに試料採取を行うものとしている(図5(b))。
 土壌汚染対策法施行規則では、土壌汚染の原因となる特定有害物質を大きく3分類し、それぞれに調査方法を規定している。以下、それぞれの調査方法の概要を解説する。

図5 調査地点の配置(土壌ガス調査)(出典:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説(環境省監修、社団法人土壌環境センター編)p31 を参照)

出典:経済産業省ウェブサイト
「電気めっき事業者のための土壌汚染対策ガイドライン策定事業報告書」


(1)第一種特定有害物質(VOC: Volatile Organic Compounds、揮発性有機物質):土壌ガス調査
 同物質の代表的なものとして、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン(ドライクリーニング及び金属部品の洗浄に使われる)が挙げられる。同物質は揮発性であるので、土壌ガス調査を行う。この調査では、10m格子区画毎、または図5に示す地点について、地下の土壌から揮発してくるガスを、分析用試料として減圧捕集瓶や以下のような方法で採取し、光イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC-PID)や質量分析計等を用いて分析する。なお、沿岸部などで地下水位が浅い場合には、土壌ガスの捕集が困難であるため、地下水中の同物質を測定する。土壌ガス調査により調査対象物質が検出された場合には、詳細調査を実施する。なお、ガスクロマトグラフィー及び質量分析計については、「環境分析技術」の解説を参照されたい。

○フィンガープリント法®
 土壌ガスを採取・分析し、特定有害物質や油分による汚染の有無を把握する方法である。コレクター(図6(左))を図6(右)のように、地表面より10~30 cmの地点に埋設し、2週間かけて土壌ガスを採取する。回収したコレクター内のVOCは、ガスクロマトグラフ法や質量分析計を用いて分析する。土壌汚染対策法施行規則で定める調査方法より高感度で、同法では障害となる油分も質量分析によって同定できる。現場作業が非常に簡便な調査技術である。

図6 フィンガープリント法®で利用するコレクター(左)と、その埋設の様子(右)

出典:クリタグループ ウェブサイト 「土壌汚染浄化・地下水汚染浄化」

(2)第二種特定有害物質(重金属類):表層土壌調査
 同物質の代表的なものとして、六価クロム、水銀が挙げられる。同物質は不揮発性であるため、表層土壌調査を実施する。図7に示した単位区画における表層付近の土壌試料を対象として、土壌溶出量調査及び土壌含有量調査を行う。図7の"■"に示す試料採取地点における表層(地表から深さ5cm)及び5~50cmの土壌をそれぞれ等量(重量)ずつ採取し、これらの混合試料を30m格子の代表試料として分析する(5地点混合法)。分析の結果、指定基準を満たさない場合には、各10m格子の試料を混合せずに分析を行い、汚染が存在する区画と存在しない区画の調査確認を行う。
 なお、分析にはICP-MS及び簡易測定キット等が利用される。ICP-MSについては、「環境分析技術」の解説を参照されたい。

図7 試料採取地点の配置(表層土壌調査)(5地点混合法)(出典:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説(環境省監修、社団法人土壌環境センター編)p31 を参照)

出典:経済産業省ウェブサイト
「電気めっき事業者のための土壌汚染対策ガイドライン策定事業報告書」

(3)第三種特定有害物質(農薬等):表層土壌調査
 第三種特定有害物質については、図7に示した単位区画における表層付近の土壌試料を対象として、土壌溶出量調査を行う。試料採取、分析の手順については、第二種特定有害物質(重金属類)と同様である。代表的なものに、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、シマジン等がある。なお、PCBについては、「PCB処理技術」の解説を参考されたい。

3)詳細調査
 詳細調査は、概況調査において指定基準値を超える汚染物質が検出された場合に行う。
 図8は、詳細調査の例である。概況調査結果による汚染範囲の平面的分布から、ボーリング地点(穴を掘って調査する地点)を選定し、ボーリング調査や地下水汚染調査を行うことにより、深さ方向についての汚染状況を把握し、対象地における汚染の三次元分布を把握する。また、この結果により、最適な土壌汚染対策計画を立案する。図8では、観測井における水質調査及び地下水の流れ方向から、汚染源の位置を特定している。
 ボーリングの深度は原則10mまでと規定されており、試料の採取深度は5~50cm、1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m、9m、10mと規定されている。ボーリングの方法は、ロータリー式ボーリング、機械式簡易ボーリングなど様々あり、目的に応じて適宜選定される。


3.技術を取り巻く動向

1)土壌汚染調査・対策技術の推進事業

 土壌汚染の状況を把握するための調査や汚染の除去等の措置のためには、多大な費用と時間を要する。そのため、汚染原因者や土地所有者等による汚染の除去等の措置を促進し、周辺住民にとって安全・安心な環境を確保するためには、安全性、確実性があり、より低コスト・低負荷型の土壌汚染調査・対策技術を実用化して普及させることが必要である。ダイオキシン類汚染土壌についても同様である。
 そこで環境省では、現在実用段階にある低コスト・低負荷型の土壌汚染調査・対策技術の現場実証試験を実施し、それらの技術の普及促進を図ることを目的として、「低コスト・低負荷型土壌汚染調査・対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」事業を実施している。
 図9(左)は、平成19年度の同事業にて実証試験が実施された、超小型重金属分析装置「Geo-REX」である。同装置は、小型で持ち運びが可能な大きさでありながら、高い重金属分析感度・精度を実現したシステムである。また図9(右)は、同装置及びその他VOC等の分析機器を積載し、土壌汚染対策法施行規則に定める第一種特定有害物質と第二種特定有害物質の全ての物質を現場で分析することができる、現場設置型ミニラボである。
 これらの装置を用いることで、従来の実験室における方法と比較して、迅速、かつ低コスト、低環境負荷での分析を実現するのが狙いである。実証試験の終了時点では、狭雑物(測定値に誤差が生じる原因となる、測定対象以外の物質)による影響を受けなかった場合には、概ね公定法と結果が同じになったが、狭雑物が存在する場合には公定法と大きく異なることがあったため、さらなる改善に向けた検討が期待される。

図9 超小型重金属分析装置「Geo-REX」(左)及び、現場設置型ミニラボ(右)

出典:環境省ウェブサイト「平成19年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査結果」

2)大気降下物由来のレアメタル土壌汚染への対応(国立環境研究所)

 レアメタルは、その希少性にも関わらず、工業分野での使用量が増加している。その中にはアンチモンのように自動車用バッテリーの電極に使用される物質や、インジウムのように携帯電話中の基板に利用される物質などがある。都市部での交通量の増加や産業活動の活発化に伴い、こうしたレアメタルが製品として廃棄されたり、製品の劣化によって環境中に放出されることにより、大気中へ排出されるレアメタル量も増加することが予想される。排出されたレアメタルは、降水等の大気降下物として、市街地の公園や学校の校庭といった公共用地に降り積もり、土壌中の粘土鉱物や有機物と強く結合することで土壌表層部に蓄積されてゆく傾向にある。
 さらに、レアメタルにはアンチモンのように、人体への影響が懸念されるものもある。公園や校庭で遊ぶ子供達が、風等で巻き上がった土壌を吸い込む、土遊びをしていて誤って経口摂取してしまうといった直接摂取により、土壌中に含まれる高濃度のレアメタルに曝露されてしまう可能性がある。
 現在、大気降下物経由等の広域的な汚染源の影響を受けている市街地土壌は、土壌汚染対策法による規制の対象となっておらず、研究面でも、このような汚染についての基礎的知見が不足している。
 図10は、つくば市で観測された雨水中に含まれる各種金属が、どの程度、人為起源によるものなのかを調べるために、国立環境研究所(つくば市)構内の5地点(裸地、スギ林、アカマツ林、ヒノキ林、シラカシ林)にバルク採取器を設置して、採取した雨水を分析した結果である。縦軸の「富化係数」とは、金属元素の「雨水中の量」と「土壌中の量」の割合のことであり、この値が大きいほど金属元素が雨水中に多く含まれていることになる。この結果から、アンチモンをはじめとする金属が、主に人為起源として大気中に放出された後、降下物として土壌に付加されていることが確認された。

図10 雨水中金属元素量の地殻を基準にした富化係数

出典:国立環境研究所ウェブサイト
研究テーマ『人為由来微量元素の土壌蓄積に関する研究』

注:Sb:アンチモン、Bi:ビスマス、In:インジウム、Sn:スズ、Mn:マンガン
以下に、富化係数の目安を記した。
・1前後…概ね、土壌に由来する金属
・10-500…地殻物質以外に起源(汚染、海塩、火山など)があると考えられる金属
・500以上…人間活動由来と考えられる金属


引用・参考資料など

(2013年1月現在)