レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

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【目次】


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レアメタルとは何か?
レアメタルの何が問題なのか?
  - 偏在性と寡占性
  - リサイクルが進んでいない(都市鉱山の活用)
新しいリサイクル制度とレアメタルリサイクルの位置づけ

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レアメタルとレアアースの基本と重要性について、また資源の偏在性やリサイクルが進んでいないといった問題について紹介し、使用済み小型電気電子機器中の有用金属をリサイクルする法制度の中でのレアメタルの位置づけについて触れます。


レアメタルとは何か?

レアメタルとレアアース

 レアメタルとは、地球上の存在量が少ないか、技術的・経済的な理由で取り出すことが難しい金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要なもの、とされ、家庭から産業、多くの分野において、現在の私たちの生活には欠かせない重要な役割を果たしている非鉄金属原材料です。


レアメタル


<レアメタル31鉱種>
リチウム(Li) / ベリリウム(Be) / ホウ素(B) / ( レアアース:希土類 ) / チタン(Ti) / バナジウム(V) / クロム(Cr) / マンガン(Mn) / コバルト(Co) / ニッケル(Ni) / ガリウム(Ga) / ゲルマニウム(Ge) / セレン(Se) / ルビジウム(Rb) / ストロンチウム(Sr) / ジルコニウム(Zr) / ニオブ(Nb) / モリブデン(Mo) / パラジウム(Pd) / インジウム(In) / アンチモン(Sb) / テルル(Te) / セシウム(Cs) / バリウム(Ba) / ハフニウム(Hf) / タンタル(Ta) / タングステン(W) / レニウム(Re) / 白金(Pt) / タリウム(Tl) / ビスマス(Bi)
 ※レアメタル分類に明確な定義はなく、本分類は経済産業省によるものです。


 具体的な用途としてたとえば、リチウムはリチウム電池の電極材や航空機材料用合金など、ガリウムは発光ダイオード(LED)材料、インジウムは液晶ディスプレイ材料、タングステンは超硬工具の合金材料といった具合です。


レアメタルの用途


 ここで、レアアースとは次の17元素の総称であり、レアメタルの1鉱種のことを指します。


<レアアース17鉱種>
スカンジウム(Sc) / イットリウム(Y) / ランタン(La) / セリウム(Ce) / プラセオジム(Pr) / ネオジム(Nd) / プロメチウム(Pm) / サマリウム(Sm) / ユウロピウム(Eu) / ガドリニウム(Gd) / テルビウム(Tb) / ジスプロシウム(Dy) / ホルミウム(Ho) / エルビウム(Er) / ツリウム(Tm) / イッテルビウム(Yb) / ルテチウム(Lu)


 具体的な用途としてたとえば、セリウムは自動車排ガス浄化触媒材料、ネオジムは高性能モーター等で使う強力磁石材料、ユウロピウムは蛍光灯の蛍光体材料、ジスプロシウムは電気自動車やハイブリッド車用ネオジム磁石の必須添加剤など。


レアアースの用途


参考)
- レアメタル31種の主な用途 「こでんリサイクル」ページより
- 携帯電話やハードディスクの例(内部写真) 「こでんリサイクル」ページより
- 元素周期表(一家に一枚周期表) 「科学技術週間」ページより


 これらの用途を見てみると、レアメタルやレアアースは私たちの身の回りの便利でハイテクな数々の電子機器製品や構造材、機能性材料中で使用されていることが分かります。


レアメタルの何が問題なのか?

偏在性と寡占性

 レアメタルの中には、現在確認されている可採埋蔵量に対して予想される可採年数が数十年というものがいくつかあります。また、レアメタルのうちその多くが技術的・経済的な理由により世界の一部の国で生産されている現状です。


表1 : 非鉄金属資源の産出国の偏在性
資源生産シェア表


参考)
- レアメタルの可採年数 「経済産業省 3R政策 調査資料 第一章」より
- レアアースの通説 正と誤「レアアースは中国にのみ存在する」 JOGMECページより
- 鉱物資源マテリアルフロー JOGMECデータベース検索ページ
※検索キーワード「鉱物資源マテリアルフロー」、カテゴリー選択「報告書&レポート」


関連ニュース)
- 中国、レアアース産業の汚染物質排出基準を発表(2011.02.28)環境展望台 海外ニュースより


 産出国の偏りは、その国で生じる何らかの供給状況の変化(政情不安、輸出政策変化など)によって、世界の多くの国々が影響を受けるリスクが高くなる、ということに繋がります。


 また中国のように政策として、鉱山環境の保護のため、レアアースなどの生産規制、輸出制限を行なうなどを例とした「資源ナショナリズム」や、少数の巨大企業(資源メジャー)が資源の採掘や製品化などの権益を押さえてしまうことによって寡占状態が生まれ、不健全な競争環境となってしまいます。


 加えて今後は新興国の経済的急成長に伴うレアメタル需要の更なる増加も見込まれ、供給不足や価格の乱高下(らんこうげ)などのリスクを常に抱えている状態です。日本のような高付加価値材料やハイテク製品の製造・輸出が経済の大きな位置を占めている国にとって、資源獲得問題が非常に重要になってきています。


リサイクルが進んでいない(都市鉱山の活用)

 このような現状を踏まえてのレアメタル資源確保上の対応として、経済産業省では①海外資源確保、②リサイクル、③代替材料開発、④備蓄を挙げています。

参考)- レアメタル確保戦略 平成21年7月28日 経済産業省 より


 ここでレアメタル資源確保戦略の一つ、「リサイクル」について見ていきます。


 日本は世界有数のレアメタル消費国であり、輸出した製品に含まれていた分を差し引いても、既にかなりの量のレアメタルを「製品」や「廃棄物」など何らかの形で国内に所有していることになります(→※都市鉱山)。


都市鉱山見出し

 レアメタルは鉱石等として採掘される状態ではすぐに原料・材料として使用できるほど金属の濃度が高くありませんので、採掘や濃縮過程で多くのエネルギーを必要とし、また多くの副次的廃棄物や環境負荷を生じます(→※隠れたフロー・TMR)。


参考)隠れたフロー・TMR 第二次循環型社会形成推進基本計画(平成20年3月)P23を参照


都市鉱山

 一方、鉄などの他の金属と比べれば使用済み製品中のレアメタルの含有量は少ないものの、観点を変えて原料鉱石と比べると、かなり高いレアメタル濃度を有する製品も少なくありません。


 そこで、レアメタル等を蓄積した製品などを鉱山とみなし、「都市鉱山」と呼ぶことがあります。


参考) 独立行政法人物質・材料研究機構
- レアメタル・レアアース特集「都市鉱山」
- プレスリリース「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」
- NIMS NOW「都市鉱山」を活用する発想と技術 2008,vol8,no5,p2-5


参考) 都市鉱山について
国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 環環KannKannより
- 都市鉱山と金属資源のリサイクル
- 都市鉱山


 都市鉱山からのレアメタルリサイクルでは、TMRのような問題が回避される一方で、使用済み製品の回収に要するエネルギーや、分離や精錬等の処理過程でのエネルギーにかかるコストが大きくなってしまうケースが多く、従ってレアメタルを含む使用済製品の多くはリサイクルされず、ほとんどが廃棄されてしまっている現状です。


参考)
- レアメタルのリサイクル率 鉱物資源マテリアルフロー JOGMECデータベース検索ページ
※検索キーワード「鉱物資源マテリアルフロー」、カテゴリー選択「報告書&レポート」

   レアメタル例 : リチウム(2011) 、 レアアース(2011)


新しいリサイクル制度とレアメタルリサイクルの位置づけ

 これまで見てきた通り、レアメタルは今後も需要増加が見込まれながらも、供給不安定な状況を背景に各国での資源獲得競争が激化することが予想されています。また、不適正な処理を行なうことで環境を汚染してしまう鉛などの有害金属を含んだ製品が海外流出している現状があり、我が国のみならず(広域アジア圏も見据えた)循環型社会形成推進の観点、不適正な処理の防止の観点からも国内でのリサイクルを推進していくことが必要な状況です。

参考)海外での不適正処理について
国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 環環KannKannより
- 製品の資源性・有害性物質の適正な管理をめざす
- E-wasteリサイクル現場の土とダストを調べる


 そこで、たくさんの検討を重ねてきた結果、貴金属やレアメタルといった貴重な金属を含みながらも、今まで余り手が届いていなかった製品分野である使用済み小型電気電子機器のリサイクルに焦点を当てた「小型家電リサイクル法」が平成25年4月より施行されました。


 しかし、制度ができたからといってリサイクルがすぐに進み始めるわけではありません。この法律の目的条文では「使用済小型電子機器等に利用されている金属その他の有用なものの相当部分が回収されずに廃棄されている状況に鑑み、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講ずる」と書かれていますが、ここで言う使用済小型電子機器等に利用されている金属にはレアメタルはもちろん含まれるものの、レアメタルのリサイクルを唯一の目的とした法律ではない、ということになります。


法と省令での対象金属資源

 リサイクルの対象となる金属資源について法や省令ではどのように書かれているのか、もう少し詳細に見てみます。


 小型家電リサイクル法の第十条、第一項では、使用済み小型家電の再資源化事業を行なおうとする者は、再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を申請することができるとしています。


 認定のための適合条件の一つとして、同、第三項、第一号では、再資源化事業の内容が、基本方針に照らし適切なものであり、かつ、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保に資するものとして主務省令で定める基準に適合するものであることとしています。


 ここで、主務省令で定める基準とありますが、その基準の一つとして、小型家電リサイクル法施行規則の第四条では、破砕、選別その他の方法により、使用済小型電子機器等に含まれる鉄、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム及びプラスチックを高度に分別して回収し、回収物に含まれる次に掲げる資源の再資源化等を自ら行うか、又は当該再資源化等を業として行うことができる者に当該回収物を引き渡すこと、として、次の資源を挙げています。


【ベースメタル】 鉄/アルミニウム/銅/鉛/亜鉛


【貴金属】 金/銀/白金/パラジウム


【レアメタル】 セレン/テルル/ビスマス/アンチモン


【その他】 カドミウム/水銀/プラスチック


※【 】内の金属等種別は、本トピックスPart1での分類であり、施行規則内の記述ではありません。

※※小型家電リサイクル法と同法施行規則については、Part3.にリンクが有りますのでご覧ください。


 つまり、現状では使用済み小型電気電子機器のリサイクルが経済的に回らない状況であっても、将来を見越しつつ、リサイクルが経済的にも成り立っていけるような制度的な仕組みをまず用意し、「できる金属から」、「できる地域から」始めていこう、とするものです。特にレアメタルは経済的・技術的にリサイクルの難易度が高いので初めから無理に取り組む必要はなく、本制度に沿ってリサイクル技術も育てつつ成功事例を増やしながら、回収及びリサイクルすることができる金属種類と地域を広げていく考えです。


 このように小型家電リサイクル法は規制的な手法ではなく、各主体がそれぞれの実情に合わせて参加していける「促進型」の仕組みとなっていることが特徴になっています。


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 Part3では、小型家電リサイクル法についてもう少し詳細に見ていきます。


※国立環境研究所(NIES)の関連研究成果についてはPart4.をご覧ください。



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