琉球大など、サンゴの有性生殖と遺伝的多様性のつながりを野外実証
発表日:2022.04.27
琉球大学と(公財)黒潮生物研究所等からなる研究グループは、サンゴが放卵し、受精が成功するまでの過程における「遺伝的多様性」の維持機構を解明した。サンゴは雌雄(性)が関与しない生殖様式で成長することもできるが、多くは「有性生殖」によって増え、群体を形成していく。ミドリイシ属サンゴは有性生殖するサンゴの代表格で、雌雄同体・放卵放精タイプの生殖様式をとっている。同タイプには卵や精子が入ったカプセルの様な固まり(バンドル)を放出する種が多い。同研究グループは、沖縄県本部町に属する瀬底島(せそこじま)において、ミドリイシ属サンゴ(ウスエダミドリイシ)の産卵を観察し、産卵した卵と精子を海中で採集して、精子の数などを計測するとともに、海中で受精した接合子(受精卵)の遺伝的多様性を解析した(採集期間:2018年5月末~6月上旬)。その結果、同種はラボ実験によって導かれた最適濃度の10分の1以下、かなり薄い精子濃度で受精できていることが判明した。さらに遺伝子に多様性が見られるとき(多型)を反映する対立遺伝子(アレル)のピークや、受精卵(プラヌラ幼生)の融合状態を詳細に解析したところ、1)有性生殖は同種あるいは異種の同調的な産卵に寄与していること、2)海水中に放たれる「精子の遺伝的多様性」が次世代(集団)の遺伝的多様性に反映されること、が示唆された。これらの実証結果は、造礁サンゴの多様性喪失は不可逆的なものであることを意味すると同時に、「戻し交雑」によるサンゴの養殖・再生の可能性を裏付けた先行研究(Kitanobo, S. et al., 2022)を強く支持しているという。
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