世界初報告!ヒートアイランド化による植物の急激進化例:赤いカタバミ
発表日:2023.10.23
千葉大学、東京大学、東京都立大学および(公財)かずさDNA研究所の共同研究グループは、世界中に分布する多年草「カタバミ」が都市の熱環境に適応進化していることを実証した。都市の気候は、自然条件のみならず、人間活動や人工物の影響を受けている。世界の大都市では、アスファルト舗装の蓄熱などによって熱収支が変化し、もとより郊外よりも高かった気温が下がりにくくなるヒートアイランド(現象)が顕著化している。本研究では、都市の路傍に“赤いカタバミが多い”という気付きをきっかけに、カタバミの表現型可塑性(葉色:緑or赤)と高温耐性の獲得について多角的な検証(生態学・植物生理学・遺伝学)を行っている。東京都市圏における野外調査(26地点)、成長量・光合成活性にかかる栽培実験(高温/常温環境下など)、集団遺伝学的手法を用いた表現型多型の進化プロセス検証、世界中からアップロードされたカタバミ写真の分析(全9,561枚)による普遍性の裏付け等を段階的に進め、「都市の高温ストレスによってカタバミの葉の色が赤く進化し、高温耐性を獲得している」と結論した。ヒートアイランドによって植物が進化していることを明らかにした初めての成果であるとしている。温暖化が進んだ世界の生物動態の予測や、高温下で栽培される農産物の開発における知見の応用が期待できる。なお、普遍性の検証には世界的な市民観察プラットフォームであり、観察データがオープンに利用できるiNaturalistのデータベースが活用されている。同研究グループが推進している「みんなでカタバミプロジェクト」をはじめ、今後のシチズンサイエンスの発展も楽しみだ(掲載誌:Science Advances、DOI: https://doi.org/10.1126/sciadv.abq3542)。
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