千葉大など、進化イベントにおける突然変異の速度上昇を検出
発表日:2022.01.21
千葉大学、金沢大学および大阪市立大学の研究チームは、植物の新たな分類群(科)の起源や多様化の始まりといった進化イベントにおいて、突然変異のスピードが上昇していたことを明らかにした。同研究チームは、植物の適応進化プロセスを探るために、カワゴケソウ科という水生植物に焦点を当てた調査研究に取り組んでいる。カワゴケソウ科のグループは約50属300種からなり、その多くは雨季乾季のある熱帯亜熱帯に分布している。全種が河川の早瀬や滝などの急流域に生育し、扁平な根が岩の上を這い、根から短命なシュート(茎や葉、花)を伸ばしながら水平方向に成長する。同研究チームは、カワゴケソウ科の進化過程における大きな進化イベント(①陸上から河川の激流環境への進出・適応、②短命シュートの獲得と多様化)の契機や原因を解明するために、遺伝子の進化速度に着目して解析した。遺伝子の進化速度は、DNAの塩基配列の置換数に基づいて求めることができ、進化速度の上昇は同じ経過時間により多くのDNA配列に変化が起こることを意味する。カワゴケソウ科植物8種と近縁種2種の遺伝子配列情報を網羅的に取得し、1,640遺伝子について解析を行った結果、①および②と同時期に進化速度が上昇していたことが分かった。遺伝子の進化速度は、突然変異や自然選択によって変わるが、自然選択の影響がほぼないアミノ酸を置換させない塩基置換に限っても速度上昇がみられたことから、①および②の時期に突然変異の加速(突然変異率の上昇)が起きたと考えられた。これらの新知見から、突然変異率の上昇が植物の重要な進化イベントと関連することが示され、総じて「突然変異率の上昇は植物の多様化の土台になる」ことが考えられる。
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