アラスカ山岳氷河の末端は侮れないメタン放出源だった!
発表日:2024.05.09
大気中に放出される自然起源メタンの主な放出源は湿地やシロアリなどと見られてきた。ところが近年、有機物の存在が少ないと考えられる氷河周辺域(例:グリーンランド氷床)でメタンの大量放出が報告され、比較的小規模な氷体や山岳氷河でもメタンの放出が相次いで確認されている。―――国立極地研究所・海洋研究開発機構(JAMSTEC)・北海道大学が中心となって実施している日本の北極域研究プロジェクトArCS IIでは、北極域の急激な温暖化が引き起こすさまざまな環境への影響を調べる学際的な研究を進めてきた。本研究では、海洋研究開発機構がアラスカ大学、森林総合研究所および北海道大学と共同で、米国アラスカ州の山岳氷河域におけるメタン放出量を世界で初めて観測し、メタン放出源として寄与解明に迫っている。4つの氷河を対象に、氷河融解水を源とする流出河川の出口付近で大気中のメタン濃度を現場測定した結果、このうち3つの氷河では一般大気より明らかに高く、最大で平均の3倍程度の値になっていることが分かり、氷河流出水中には一般河川の2〜40倍のメタンが含まれていることが明らかになった。これらの知見より、一部の山岳氷河の末端では、メタンが溶け込んだ流出水が解放され、大気に触れ、メタン放出が起きやすくなると考えられた。本成果は、これまで考慮されてこなかった山岳氷河が“新たなメタン放出源”として寄与している可能性を示唆するとともに、世界に数多く存在する山岳氷河における調査の必要性を強く支持するものであり、メタン放出量推定の精緻化に資する新知見、と訴求している(DOI: 10.1038/s41598-024-56608-y)。
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