生物ポンプは年間74億トン炭素~高緯度域や熱帯域で特に重要!
発表日:2024.12.16
海洋研究開発機構(JAMSTEC)らは、「生物活動を通した海洋の二酸化炭素吸収(生物ポンプ)」の空間分布を全海洋で評価し、その総量を年間74億トン炭素と見積もった。本成果は、JAMSTECと東北大学と共に設立した新組織「WPI-AIMEC(正式名称:東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所)」の共同研究によって得られたものである。これまで年間130億トン炭素と認識されていた生物ポンプの役割が過大評価であった可能性を示唆している。──両者は今回、JAMSTECを含む世界の研究機関によって取得された観測データを用いて、植物プランクトンが光合成を行う際に生成される酸素量を精査し、海洋表層における「溶存酸素収支」を詳細に計算した。その結果、実際の海洋炭素の取り込み量は年間74億トン炭素であり、従来の推定値よりも大幅に少ないことが明らかになった。また、各半球の高緯度域や熱帯域において、生物ポンプが相対的に重要であることが示された。──海洋炭素循環の基礎的な理解を深めるだけでなく、将来気候予測に用いられる地球システムモデルの性能向上にも寄与する知見であり、今後、観測体制の強化とデータの拡充が進むことで、生物ポンプの気候変動に伴う変化などの理解が進むと思われる。