中部大、細菌共生型・高殺虫性「線虫(生物農薬候補)」を発見
発表日:2025.07.03
中部大学 応用生物学部環境生物科学科の長谷川浩一教授と杉山大騎氏は、岐阜県恵那市の土壌から、強い殺虫力を持つ昆虫病原性線虫「スタイナーネマ・モンティコラム(Steinernema monticolum)KHA701株」を発見した。昆虫病原性線虫とは、殺虫毒素を生成する細菌と共生することで殺虫能力を獲得・進化させた線虫であり、生物農薬としての活用が期待されている(掲載誌:Scientific Reports)。
本研究では、ハチノスツヅリガ幼虫を用いた実験により、KHA701株が既存の高殺虫性線虫「ヘテロラブディティス・バクテリオフォーラ(Heterorhabditis bacteriophora)」を上回る殺虫力を示すことが確認された。また、ツマグロヨコバイ、マイマイガ、チャバネゴキブリ、ジョロウグモなど18目41科63種の節足動物に対して広範な殺虫効果を持つことが明らかとなった。この線虫は、従来知られていた共生細菌「ゼノラブダス・ホミニキィ(Xenorhabdus hominickii)」に加え、複数の高殺虫性細菌(Elizabethkingia miricola、Pseudomonas protegens、Serratia marcescens、Staphylococcus属など)を同時に共生させており、これらの組み合わせによって殺虫力が強化されることが実験的に示された。
世界では農作物の約40%が害虫被害により収穫不能となっており、2050年には人口が100億人を超えると予測される中、持続的な食料増産に向けた環境負荷の少ない害虫防除技術の開発が急務である。本成果は、害虫の種類や地域環境に応じて共生細菌を組み替えることで、標的に応じた殺虫力を発揮する「プログラム可能な生物農薬(Programmable Biopesticide)」の開発や、「総合的病害管理(Integrated Pest Management:IPM)」の普及に資する技術的基盤を提供ににつながることが期待される。
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