畑を超えたエダマメ栽培―東大ら、NFT栽培の応用性を拡張
発表日:2025.09.12
東京大学大学院農学生命科学研究科の高野智京氏(修士課程・研究当時)・若林侑助教・矢守航准教授、および法政大学生命科学部・佐野俊夫教授らの研究グループは、世界で初めて人工光型植物工場におけるエダマメの安定生産に成功した(掲載誌:Scientific Reports)。
従来の植物工場はレタスなどの葉物野菜を中心とするものが多く、比較的栽培期間が長く、多くの光量を必要とするため、豆類の生産は困難と考えられてきた。そうした背景があるなか、本研究では養液栽培の一種であるNFT方式(養液膜栽培)を用いたエダマメの安定生産に向けて果敢に取り組み、露地栽培を上回る収量と品質を実現した。
エダマメは世界的に人気のある食材であるが、収穫後の鮮度低下が早く、夏季に限定的な流通となっている。研究グループは、NFT、ROC(ロックウール栽培)、MIST(噴霧栽培)の3方式を比較し、NFT方式が最も旺盛な成長を示し、莢数・種子数ともに多く、収量が露地栽培を上回ることを見出した。また、NFT栽培によるエダマメは甘味を左右するショ糖の含量が高く、健康成分として注目されるイソフラボンも豊富に含まれていることも確認された。これらの結果はLED光環境がイソフラボン合成を促す可能性を示しており、畑では得られなかった付加価値の形成に寄与することを示している。さらに、高品質なエダマメを季節を問わず一年中、例えば市部の限られた空間や砂漠地帯、宇宙空間などで生産できる可能性を裏付けたものとなっている。
研究グループは、NFT方式が多段式の積層栽培に適しており、閉鎖型栽培システムとしての応用展開・拡張可能性を強調している。また、原著論文では、気候変動や環境負荷低減への寄与にも言及しており、土地利用型農業とは異なる「持続可能な食料供給モデル」の具体像を提示している(本サイト・ニュース担当)。