日本海東部で進む昇温化と春季低塩化―50年間のトレンド
発表日:2025.11.18
水産研究・教育機構は、日本海における長期的な水温・塩分変化を解析した成果を発表した(掲載誌:Geophysical Research Letters)。
日本海は地球温暖化の影響を受けやすい海域であり、これまで表層水温の変化に注目した研究が多かったが、塩分や亜表層の長期変化を体系的に解析した例は限られていた。水温と塩分は海洋の密度構造や循環を決定する基本要素であり、その変化は成層強化や海洋熱波の発生頻度に影響し、漁業資源や生態系への影響評価に不可欠である。
本研究では、1976年から2022年までの約50年間にわたる海洋観測データを統合することで、日本海全域で進行する昇温化が表層だけでなく水深50~100 mの亜表層にも及んでいることを明らかにした。また、春季に日本海東部沿岸から沖合にかけて低塩化(淡水化)が進行している現象を見出し、その要因として降水・河川流量の増加と中規模渦による沿岸淡水の沖合輸送を特定した。
本成果は、日本海の熱・淡水滞留構造の変化を示唆し、将来的な海洋熱波の強度や頻度に影響する可能性がある。研究チームは、水産資源の分布や生物生産へのインパクトを評価する基盤情報として、観測の継続が重要だとしている。