都市夜間光が沿岸フナムシ類の分布と行動特性に与える影響
発表日:2026.02.25
千葉大学は、都市化した沿岸環境がフナムシ類の分布や行動にどのように反映されるかを把握するため、東京湾全域を対象にフィールド調査、遺伝的解析、室内行動実験を組み合わせた総合的な検証を行った。本リリースでは、都市沿岸の夜間人工光(Artificial Light at Night: ALAN)が沿岸生物の空間分布や行動特性に及ぼす影響を、多地点のデータと種ごとの反応比較に基づいて整理している。沿岸域は人工構造物の密度が高く、生物が移動によって影響を回避しにくい環境であることから、都市特有の要因が生物の適応や分布形成に強く作用する可能性があると位置づけている(掲載誌:PNAS Nexus)。
調査では、東京湾の湾奥狭窄部を境に、生息するフナムシ属が内湾部と外湾部で明確に異なることが示された。内湾部ではアオホシフナムシが優占し、外湾部ではフタマタフナムシが主に分布していた。また、一部地点で北方系のキタフナムシが同所的に確認され、船舶移動などによる移入が示唆されている。これらの空間分布を環境変数と照合した解析では、塩分や植生に加えて ALAN の強度 がアオホシの分布と強く関連していると整理され、光環境が沿岸域の分布パターンを特徴づける要因となり得ることが示された。
室内実験では、幼生期から ALAN に曝露 した個体と暗条件で育成した個体を比較し、長期的な影響を検証した。その結果、ALAN 曝露 は活動リズムの変化や生存率低下につながる場合があり、影響の大きさは種によって異なる傾向が確認された。外湾部に生息するフタマタでは活動量や成長に抑制傾向が見られた一方、内湾部に生息するアオホシでは影響が相対的に小さい結果となり、都市沿岸の環境条件に対する応答の違いが示唆されている。
本成果の今後の展開について千葉大学の研究チームは、光環境への可塑的な反応がどのような分子基盤によって支えられているのかを明らかにするため、行動実験の拡張に加え、ゲノム配列や遺伝子発現の解析を進める方針であると述べている。また、人間生活に不可欠な夜間照明であっても、生物にとっての「適切な光環境」は人間側の基準だけでは決められないとし、今回の知見が身近な照明環境を見直す契機になり得るとの見解を示している。さらに、都市沿岸域における光環境が、種間の行動特性や生理的特性の違いを通じて分布形成に影響し得ることは、今後の沿岸管理や都市環境デザインを検討する上で基礎情報となると位置づけている。
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