東南アジアにおける森林の土地利用強度と炭素収支・水利用効率の関係
発表日:2026.02.26
東京大学大学院農学生命科学研究科、ゲッティンゲン大学、マレーシアおよびインドネシアの研究機関による国際研究グループは、東南アジアにおける森林からプランテーションへの土地利用変化が、生態系における炭素・水・エネルギーのフラックスにどのような差異を生むのかを整理した。本研究は、東南アジア16地点の渦相関法によるフラックスタワー観測データ(112サイト年)を対象とし、土地利用強度の異なる一次林、二次林、プランテーションの比較を行ったものである。森林転換が進む地域における包括的分析は限られており、土地利用強度が生態系機能に与える影響を総合的に把握することを目的としている(掲載誌:Global Change Biology)。
分析の結果、鉱質土壌上に成立した成熟したプランテーションでは、年間炭素吸収量が−1.19~−0.74 kg C m⁻² yr⁻¹の範囲となり、一次林(−0.85~−0.02 kg C m⁻² yr⁻¹)を上回る値を示した。一方、造成初期のプランテーションや泥炭地上の管理地では0.98 kg C m⁻² yr⁻¹となり、炭素が放出される傾向が確認された。これらの結果は、土地利用強度だけでなく、土壌条件および生態系の発達段階が炭素収支を左右することを示している。 水循環に着目すると、プランテーションでは蒸発散量が降水量を上回る場合があり、水ストレスを受けやすい状態が整理された。年間平均の水利用効率(WUE)は、一次林が 2.63~6.50 g C kg⁻¹ H₂O⁻¹ の範囲で推移し、プランテーションの 2.08~3.53 g C kg⁻¹ H₂O⁻¹ を上回った。また、プランテーションは最大の総一次生産量に到達するために必要な光量が少ないものの、日平均光利用効率(LUE)が一次林より高いわけではなく、土地利用強度がLUEの向上を直接的に規定しないことが示された。
研究グループは、生態系における炭素吸収量の向上と水利用効率の低下との間にトレードオフが存在する点を指摘している。特にプランテーションでは、水資源の供給状況に対する依存度が高く、降水量の変動が炭素吸収に影響しやすいと整理されている。一方で、一次林や二次林の維持は、水利用効率や干ばつ耐性といった生態系のレジリエンスを支える上で一定の役割を持つとされる。今回の結果は、土地利用の転換に際して複数の指標を踏まえた検討が必要であることを示す基礎的知見を提供するものである。
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