発電所や工場から排出されるガスに含まれる二酸化硫黄を除去するには、排煙脱硫装置を設置しなければいけません。20年前までは、アジアでこの装置を設置・運転できたのは日本だけでした。今では、アジアの各地で排煙脱硫装置の設置が進んでいます。
「エコ」が日常語になり、「環境」がマスメディアで語られない日はありません。
けれども、人々は環境問題の性質を正しく認識しているのでしょうか。はなはだ心元ないのが現状です。国立環境研究所の青柳みどり先生の研究チームが一般市民を対象にして調査を行ったら、地球温暖化と二酸化炭素との関係を正しく理解している人は殆どいないということが明らかになりました。環境科学を理解している人は少数派のようです。
1960年代、日本が高度経済成長の裏側で激しい公害問題を引き起こし、公害病が多発した時代、そのメカニズムや対処方法を研究したのは、医学者、技術者、科学者たちでした。
今から100年も前に地球温暖化が起こるかも知れないと心配した人も、50年前からハワイの山頂で二酸化炭素濃度を営々と測定し続けた人も、20年前にそれらのデータを使って将来の気候を予測しようとした人も、みな科学者です。
30年前にフロンガスがオゾン層を破壊することを警告した人も、実際にオゾン層が南極上空で薄くなっているのを観測した人も、科学者でした。
環境問題とは、人間活動が自然生態系に及ぼす物理的、化学的、時には生物的作用の結果です。「何がおきているのか」を理解するためには科学の知識が欠かせません。こうした知識を環境科学と呼ぶならば、それは、文系・理系を問わず環境問題を学び、研究するための必須知識だと私は思います。
高校生や文系の大学生、あるいは一般の方に環境科学の基礎を学んでもらうため、数式や化学式を使わない入門書を書きました。関心のある方は、ぜひ、読んでみてください。
藤倉良・藤倉まなみ 著 『文系のための環境科学入門』 有斐閣 2,100円+税