カギケノリ配合飼料を巡る懸念、ユーグレナ25%添加で払しょく可能に!
発表日:2023.04.12
(株)ユーグレナと帯広畜産大学は、牛のげっぷ由来メタンを軽減しつつ、エネルギー要求量の遜色が少ない飼料設計を見いだした。反芻動物が草(粗飼料、繊維質)を消化する過程でメタンが生じる。メタンは地球温暖化に対し、CO2の20~30倍近くの影響をおよぼすGHGであるため、畜産分野におけるメタン発生抑制の研究が盛んに行われている。近年、飼料に紅藻類の一種「カギケノリ」を少量混ぜることで、メタン放出量が大幅に削減できるといった研究成果が発表され、世界の注目を集めている。カギケノリは日本近海を含む太平洋沿岸に広く分布しており、牛の消化器にいるメタン生成細菌を減らす化学物質「ブロモホルム」を含有している。しかし、ブロモホルムは家畜がエネルギー源とする揮発性脂肪酸(VFA)の組成に悪影響をおよぼす可能性がある。飼料への配合量を単純に増やせば良いという話ではない。他方、(株)ユーグレナはR&Dの一環として、微細藻類ユーグレナをブレンドした飼料をブランド地鶏やサケに給与した実績がある。今回の共同研究は、ユーグレナが栄養素に富み、穀物と同等もしくはそれ以上の飼料原料となるとにらみ、畜産分野における応用展開を見据えて行われたもの。先ず、一般的な飼料にカギケノリを1%または2.5%配合した飼料、さらにその一部を10%または25%のユーグレナで代替した飼料を作製した。次に、それらを牛の第一胃内(ルーメン)から採取した胃液に浸し、成分を分析するシンプルな比較対照実験を行った結果、「カギケノリ1%・ユーグレナ25%配合飼料」の組み合わせは、胃から出るメタンの量が40%減少することが確認された。また、カギケノリの配合率を2.5%とした飼料の場合、VFA発生量が有意に低下することが明らかになった。すなわち、カギケノリの配合率は1%にとどめることが妥当であり、「カギケノリ1%・ユーグレナ25%配合飼料」が牛の健全性とメタン排出量軽減の両面でベストなフレンドであることが示唆された。高付加価値飼料としてのさらなる検証を進め、事業化を目指していくという。