湿度が左右する熱中症リスク、世界規模で明らかになったWBGTの真価
発表日:2024.08.20
「極端な高温」が発生する頻度や強度が増しており、暑熱による健康障害の世界的な増加が懸念されている。日本では、暑熱に起因するめまいや頭痛などの症状から、死亡に至る重篤な病態までを広く「熱中症」と定義している。国内における熱中症による死亡者数は、2010年以降、529人から1,731人の間で推移している(出典:厚生労働省、熱中症による死亡数 人口動態統計・確定数より)。関係省庁等は「暑さ指数(WBGT: Wet Bulb Globe Temperature)」の実測と予測に努め、さまざまな熱中症予防対策を推進している。---今回、東京大学大学院の工学系研究科および医学系研究科の研究チームは、暑熱による「死亡リスク」に対する湿度の影響を世界規模で評価した。具体的には、過去40年間にわたる世界43か国・地域、739都市の日別死亡データと気象再解析データを用い、WBGTを含む多様な湿熱指数(HSI: Heat Stress Indicator)と夏季の死亡リスクとの関連を検証した。その結果、実際に熱ストレスが高まる時期と「各HSIが年間で最も高い値となる10日間」が必ずしも一致しないことが明らかになった。また、その不一致の要因を探るため、各都市の気候や社会経済的指標を組み合わせた統計分析を行ったところ、各HSI(気温、湿球温度、WBGT、熱指数など)と死亡リスクの相関関係が国・地域・都市ごとに異なることが判明した。さらに、各HSIの「説明性」は、各地の暑熱ストレスに対する気温または湿度の影響度合いを反映していることも分かった。---例えば、アメリカの沿岸部や五大湖周辺地域、ペルー、韓国、そして日本では、温度よりも「湿度、日射・輻射、気温を包括したWBGT」が高い関連性を示した。環境省・気象庁等が採用しているWBGTの有用性を支持する強固な科学的裏付けが得られたこととなる(DOI: 10.1093/pnasnexus/pgae290)。
▲ページ先頭へ
新着情報メール配信サービス
RSS